数日間の放浪の末に、ようやく浅瀬に囲まれた島を見つけることができた。
「やっっっと見つけた…!」
珍しくカイが喜びをあらわにしている。
それだけこの長い船旅はカイにとって苦痛だったのだろう。
ここ数日間のげっそりとしたカイを思い出す。
「何か変な祠もあったし、俺もう疲れた」
弱音まで吐いている。
変な祠…ああ、あれか。
海の真ん中にぽつりとあった祠。
入ると下り階段。
降りても降りてもずっと階段は終わらず
諦めて昇ったらすぐに地上に出たんだっけ。
「何だったのかしらね、あの祠」
「さあな」
「でも、何か厳かな雰囲気だったよね」
「ええ。また行くかもしれないから、地図に印はつけたわ」
「さすが」
ユキはこういうところ、本当にしっかりしていると思う。
そして今僕たちの前には、浅瀬に囲まれた小さな島。
「で、どうするんだったかしら」
「月のかけらを…使う、んだよね?」
使うと言われても、別にスイッチやボタンがあるわけではないし
どうすればいいんだろう。
「とりあえず掲げてみるか。よっ、と」
そう言うと、カイはかばんから月のかけらを出し
空に向けてかけらを持った手を高く伸ばした。
ごごごごごごごご
「!」
目の前の浅瀬が音を立てて海に沈んでいく。
「やったわ!」
浅瀬がなくなった後に残ったのは、小さい島。
奥の方に、洞窟への入り口がある。
さっさと上陸して、洞窟の方にすたすたと歩き出すカイ。
僕も行かなきゃ。
ぞくっ
「あれ、何だろう」
今、何か寒気が。と言うより、嫌な予感がするんだけど。
「どうしたの?行きましょ」
ユキに促される。
…気のせいだよね。風邪でも引いたかなあ。
「ああごめん。今行くよ」
変な予感を振り払うように、洞窟への入り口へと駆けた。
でも、この予感は気のせいじゃなかったんだ。