水の音で目が覚めた。
街の中に川があるって何か新鮮。
「お、起きたか」
「あ、おはよう」
カイはいつも早起きだ。眠くないのかなあ。
「さっき、羽衣名人のおうちの人がきて、羽衣ができたって言ってたわ」
「ほんと?じゃあ朝ごはん食べたら行ってみようよ」
半日で作るなんてすごいなあ。
「ごめんくださーい」
「おお、よくぞ来た。出来上がっておるぞ」
そう誇らしげに言い、何かひらひらしたものを見せる名人。
「水の羽衣じゃ。そちらのお嬢さんが着るとよかろう」
「あ、ありがとうございます」
とりあえず受け取るユキ。
「どうもありがとうございました」
ぼくたちは一礼して名人の家を出た。
「ねえナオ」
「ん?なあに」
「これ、着ない?」
そう言いながら羽衣をぼくに渡してくる。
「ユキ、着ないの?」
「んー、何だかスケスケして落ち着かないから」
そう言われて羽衣を見ると、確かに向こうが透けて見える。
肌触りはつるつるしていてちょっと冷たい。
強く引っ張ってみてもびくともしない。
見かけによらずけっこう防御力が高いかもしれない。
「そっか。…カイ、着る?」
一応カイにも聞いてみる。
「俺、鎧あるし」
ふるふると首を横に振る。
「じゃあぼく貰っちゃおうかな」
そう言って羽衣を羽織った。
「これからどうする?」
「俺武器屋見たい」
珍しくカイがそんなことを言う。
「あ、そうだね。じゃあ武器屋さん行こう」
武器屋さんの品揃えはなかなかのものだった。
「ユキ、何かほしいのあるか?」
「んーん、特には」
「そうか。ナオは?」
「ぼく、はやぶさの剣がほしい」
お店に入った時から気になっていた細身の剣を指差す。
「はやぶさの剣?」
カイは知らないらしい。
「この剣を持ってると、すばしっこくなって、2回攻撃できるんだよ」
「何!それは便利だな」
「うん。でもちょっと高いんだ。…だめかなあ?」
「25000ゴールドか。確かに安くはないが…」
ちょっと上目づかいにカイを見る。
これは妹が良く使うテクで、奴が使うとほぼ百発百中。
「ま、いいだろう。他に買うものもないしな」
「ほんと?ありがとう。大事にするね!」
結局はやぶさの剣だけ買ってお店を出た。
「さて」
「昨日頼まれた話はどうしましょうか」
「ああ、搭に爺さんがって話?
助けたいのは山々なんだがどうやって行けばいいのやら」
「とりあえず近くまで行ってみようよ。
お爺さんが行けたならぼくたちだって行けるはずだよ」
「そうだな。じゃ、行ってみるか」
そしてぼくたちは街を出た。
「あら?」
ユキが首をかしげている。
「どうしたの?」
「川が繋がってるわ」
ユキが指差す方向を見ると、船をとめたあたりから街まで
川ができて繋がっていた。
「ここ、昨日は地面だったよな」
そう、ぼくたちは川が途切れていたから船をとめて歩いてきたんだ。
「水門を開けたからかしら」
「川が繋がったってことは、船に乗って搭のある島まで行けるぞ」
「そうだね。じゃ、船に戻ろうよ」