まぶしい太陽の光で目が覚めた。
まだ頭がぼーっとする。
あの時…わたしは地下室に逃げて…
待ち構えていた魔道師の杖から出る光を浴びた。
その後のことが思い出せない。
ここは…どこなのだろう?
どうやら外みたいだけど…街?
あれ?何か変。地面がいつもより近い。
何で?わたし四つんばいになってる?
とりあえず立ち上がらなきゃ、って。
…できない。どうしちゃったんだろうわたし。
お城はどうなったんだろう。お父様は無事なのだろうか。
ふと周りを見回したら、子供と目が合った。
かわいい、そう思って近づいたら、その子がいきなり泣きだして
お母さんのもとに走って行ってしまった。
どうして?
とりあえずここがどこだか分からないと何も出来ない。
近くにいた人に声をかけて尋ねてみよう。
「ムーンブルクのお城はどこですか?」
そう言ったつもりだった。でもわたしの口からはその言葉は出ず
「わんわんっ」
え?何で?しゃべれない!
話しかけようとした人も走り去ってしまった。
どうしよう、どうしよう。
わたし、どうしちゃったの?
あてもなく歩き回った。
誰か、教えて。ここはどこなの?お城はどうなったの?
しばらく歩き回っていたら喉が渇いた。
いつもなら誰かに頼めば飲み物を持ってきてくれた。
でも、今わたしの周りには誰も…誰もいないんだ。
水…水が飲みたい。
泉が目に入った。あの水は飲めるかな。
とぼとぼと泉まで歩き、水を汲もうとした。
あれ?手がうまく動かせない。
どうしよう、飲めないよ。
喉…乾いた…。
誰も見てないよね。直接泉に口をつけて水を飲むことにした。
お父様に見つかったらはしたないって怒られちゃう。
ああ、冷たい。おいしい。
水を飲み終わり、ふと泉を見た。
泉に映っている犬と目が合った。
え?犬?わたし?
信じられない。
「何で?」そう言ったつもりだったけど「わんっ」って聞こえた。
泉の中の犬も同じように「わんっ」って口を開けた。
信じられないけど、あの犬は…わたしだ。
これからどうしよう。
わたしずっと犬のままなのかな。
お水は飲めるけど、ごはんとかどうすればいいんだろう。
誰か…助けて…。
涙があふれてきた。
この手だと涙をぬぐうこともできない。
目の前が滲んでいく。
地面に涙の雫が落ちた。