がちゃ
ごめんくださーい。
金のカギの扉の民家に入ると、そこは家じゃなくてお店だった。
「いらっしゃいませぇ」
何だか甘ったるい声の店員がいる。
「あまつゆのいとはいかがですかぁ?」
雨露の糸?
「雨露の糸って何ですか?」
とりあえず聞いてみた。
「気になっちゃう感じ?」
気になるから聞いているんだけど。
「あらぁ?ちょうど切らしてたみたぁい」
え、売り切れ?
「じゃあ帰ります。どんな品かも分からないし」
とカイ。何だか胡散臭いとか思っているのかもしれない。
「いつもはぁ、風に吹かれてぇ、ドラゴンの角っていう塔のぉ、北側の3階に落ちてるんですよぉ」
この店員、カイの話全然聞いてない。
と言うか、そんなのどうやって仕入れてるんだろう。
カギも閉まってるし、このお店って大丈夫なのかな。
「そうですか、それでは失礼します。カイ、ナオ、行きましょ」
ユキがそう言い、ぼくたちはその店を後にした。
「またきてねぇ、じゃあねぇ」
手をぐっぱぐっぱしていた。
店の外。
「…何だあの知性のかけらもない店員は」
「何でかしら、何か頭に来るのよね」
確かに、気になっちゃう感じ?とか言われても困る。
「まあまあ。で、どうする?雨露の糸、取りに行ってみる?」
「んーそうだなー。じゃ、アレフガルドの用事が終わったら行ってみるか?」
「そうね。あの店員はともかく、その謎の糸は見てみたいし」
「OK」
「じゃ、とりあえずは南東のほこらに行くか」
「ええ、今度こそあのおじいさんをぎゃふんと」
「お姫様はそんなこと言わないの」
張り切るユキとたしなめるカイ。何だか胸のあたりがちくちくする。
「…どうした?」
「あ、ううん、何でもない。じゃ、行こうか」
「ん」
そしてぼくたちはアレフガルド南東のほこらへ向かった。
数時間後。
「…着いた」
ようやくぼくたちはほこらに着いた。
道も険しくて歩くのがちょっとたいへんだったけれど
きっとこの道を昔ロトの勇者も歩いたんだろうなあ、なんて思うと
懐かしいような変な気持ちになる。
「行きましょ」
「あ、うん」
ほこらの地下に続く階段を降りた。
あのおじいさんがまたかぶとの前に立ちはだかっている。
「出なおしてきました」
「しるしは?」
おじいさん、こないだからそれしか言わない。
「これです」
カイがかばんからロトのしるしを出しておじいさんに渡した。
「おお、これはまさしくロトのしるし」
「俺たちがロトの子孫だと認めていただけますか?」
「そなたにロトのかぶとを遣わそう。しばし待たれよ」
そう言うと、おじいさんはは後ろの台に飾ってあるロトのかぶとを持ってきた。
「これはロトの子孫たるそなたにふさわしいものじゃ」
「ありがとうございます」
ぺこりとお礼をしてカイがかぶとを被る。
青いかぶとと盾を持ったカイは本当にロトの勇者のように見えた。
「ここにはもう用がないはず。立ち去られよ」
渡すもの渡したら何だかそっけない。
…あれ?
何か、あのおじいさんの体、透けているような…?
見間違いかなあ?
ごしごしと目をこすって見てみてもやはり透けているように見える。
横を見るとユキも目をごしごししている。
…ぼくの見間違いじゃないみたいだけど…?
「ようやく…約束を果たすことができた…
やっと…皆の元へ行ける…
ロトの子孫よ、必ずやハーゴンを倒し、この地に平和を…」
そう言い残すと、おじいさんの姿はすうっと消えた。
「消えた…?」
「え、ちょっと、…幽霊?」
「カイ、さっきのかぶとは?」
「ちゃんとあるぞ、ほら」
カイがかぶとをコツコツと叩く。
「夢…じゃないよね。ぼくたち3人全員見てるし」
ぼくたちは確かにおじいさんと話をして、かぶとだってもらった。
「…何だったのかしら」
「うーん」
「とりあえず戻るか」
「…そうだね。じゃ、外に出たらルーラで帰ろう」
そしてぼくたちはアレフガルドに戻った。