ナオは船室に行ってしまった。
わたしはひとりになりたくてもう少し甲板に残ることにした。
ちょっと風は冷たいけれど、その方が頭が冴える気がする。
どうしてだろう。
さっき聞かれたとき、カイの魔法の練習に付き合ったって言えなかった。
別に隠すことでもないのに。
ナオに話したことは嘘じゃない。
でも、隠し事をしてしまったことが何だかとても後ろめたい。
ナオはいつだってまっすぐに話してくれるというのに。
…自分の気持ちが分からなくなることなんて初めてで、どうしたらいいか分からない。
もう一度、空に光る一番星を見上げる。
暗くなったせいか、さっきよりはっきり見える。
--一番星になって、お空の上からずっと見ててくれるんだよ--
!
遠い昔に言われた言葉が聞こえた気がした。
がちゃ
後ろのドアが開いた。
「ユキ?」
呼ばれて振り返るとカイがいた。心なしか顔が青い。
「そろそろ夕飯ー」
「あ、はい、ありがとう。今戻るわ」
「…どうかしたのか?」
怪訝な顔で聞いてくる。
「何が?」
「いや、この寒い中ひとりで外にいるから」
自分が船酔いで寝込んでいる時なのに…心配して来てくれたんだ…。
そう思うと何だか切なくなる。
「ちょっと考え事してただけ。大したことじゃないわ」
「ならいいが、風邪引く前に戻った方がいいぞ」
「ええ、ありがとう。…カイはもう平気なの?」
「ん、ああ。休んだら楽になった。もうすぐ陸だからそれまでがまんするさ。
じゃ、俺先に戻るから」
そう言うとカイはさっき開けたドアから再び船室に戻って行った。
「…わたしも戻ろう」
誰にともなく言った。
考え事をしているだけだとしても、彼らに心配をかけてはいけない。
答えはそのうち出る。