サマルトリアの城を出たぼくは、
とりあえず勇者の泉に向かう事にした。
途中スライムとかおおなめくじとかがおそってきたけど
何回か殴るうちにやっつけることができた。
ぼく、剣ってあまり得意じゃないんだよね。
カイならこんな敵すぱっと一発なんだろうな。
剣得意だって聞いたし。
あーぼくも強くなりたいなぁ。
昔っからすましてて黙っててとっつきにくい奴だったなーカイ。
城の女中に言わせると、そこがクールでかっこいいらしいんだけど。
あんな奴のどこがいいのかな。
魔法も使えるぼくのほうがかっこいいと思うんだけどなー。
ユキ…大丈夫かな。
最後に会ったのは、もう何年前になるだろう。
ぼくはその頃まで、妹くらいしか
同世代の女の子と話したことはなかった。
話してみて、あいつとは全然違ってた。
もう、比べる時点で間違いだってくらいに違ってた。
髪の毛だってふわふわしてて、目もくりっとしてた。
肌は雪のように白かった。あ、だからユキって名前なのかな。
太陽みたいに笑ってたっけ。
なんかあまくていいにおいがしたっけな。
そんなことを考えながら歩いているうちに勇者の泉にたどり着いた。
ぼくって方向音痴だったのかな、あはは。
この水浴びたら、ぼくもっと強くなるのかな。うん、きっとそうだ。
変なおじいさん、ぼくにもっともっと水じゃんじゃんかけて!
ぼく、もっと強くなりたいんだ。
おじいさんに水をかけてもらったついでに聞いてみた。
カイはまだ来てないらしい。
ふふん、ぼくの方がやっぱりすばやいんだ。
この調子でユキとふたり旅だ。
わくわくしちゃうなー。
次はどこに行けばいいんだろう。
ムーンブルクは確か南にあったはずだから、
南に行けばいいにちがいない。
うーん、ぼくって頭いい。
南に歩いていたら変なほこらを発見した。
中に入ると兵士に通せんぼされた。
ぼくは自分がサマルトリアの王子ナオであるということ
これからムーンブルクに行くので
ここを通してほしいということを伝えた。
でも、答えは
「ここはローラの門。ふたりそろってから来てください」の一点張り。
だーかーらー。ふたりそろうために通るんだってば!
早くしないとカイに追いつかれちゃうよ。
ねーえー、通してってばー。
とりあえずその場は退散。
あとで兵士が寝静まった時、とか
よそ見した時、とかに通ろう、と思ったんだけど…。
あいつら、いつ寝てるの?全然スキがないよ?
はぁぁ。
これじゃユキに会えないよ…。
とりあえず今日は疲れたから、リリザの町に戻って宿に泊まろう。
リリザの町の宿屋で横になってうとうとしていたら、
誰かに名前を呼ばれて目が覚めた。
寝ぼけまなこでぼーっと見てみたら、何年ぶりかに会うカイだった。
会いたくなかったのになー。ちぇっ。
とりあえず
「いやーさがしましたよー」とか言っておくか。
探してたのはこいつじゃないけど。
どうやらこいつがいないとローラの門通れないみたいだし。
しかし、昔に輪をかけて無口だねこいつ。
さっきからぼくの名前と「…行くぞ」しか言ってないよ。
絶対こいつ、むっつりすけべに違いない。うん、きっとそうだ。
でも、しかたない。こいつがいないとユキに会えないんだ。
ユキのことを聞いたら、こいつの目がふっと陰った。どうしたんだろう。
昔けんかでもしてて会いたくないとか?
ともかくこれでローラの門を通れるぞ!
待ってろよーユキ。ぼくがすぐに会いに行くからねー。