「よぉ、姉ちゃん。ここらへんでは見かけない顔だな」
ユキがいきなり柄の悪い男に話しかけられた。
「当然よ。ここには今日初めて来たんだもの」
だから何という顔でユキが答える。
「おーそうか。じゃ、道具屋には行ったか?」
「…これから行くつもりなんだけど」
道具屋がどうかしたのだろうか。
「俺よお、ここの道具屋で牢獄のカギを売ってるって聞いたんだが
全然売ってねえの。ガセかよ、けっ」
「牢獄のカギ?」
「ああ。姉ちゃんたちも道具屋に行ったら探してみな。
見つかるかどうかは知らんがな。
きっと親父がどこかに隠してやがるんだ」
「そう、ありがとう」
「だ、そうよ」
男からちょっとはなれてからユキがぼそっと言った。
「牢獄のカギか。あると便利かもしれないが、ほんとに売ってるのか?」
「とにかく行ってみようよ」
そして俺たちは道具屋についた。
品揃えはごく普通のようだが…?
突然ナオがカウンターの奥を指差して店主に聞いた。
「おじさん、あのふくろはなあに?あれも売り物だよね?」
指差す先には手のひらサイズのふくろが。
突然店主の顔色が変わり、眼光が鋭くなった。
「…どこでその話を聞いた?これはちょっと値が張るぜ?」

「ほぉ、いくらなら譲ってくれる?」
負けじと睨み返したが店主は全然怯まない。
「さあな。俺の気分次第だ。それでもいいなら財布を渡せ」
「ほらよ」
俺は店主に財布をぽいっと投げた。
「ちょっと、カイ。すごい値段だったらどうするのよ?」
ユキが小声で聞いてくる。
「その時はその時だ」
「…大丈夫なの?」
「何とかなるさ」
間もなく店主が硬貨を数枚財布から抜き、
財布とふくろを俺に渡してきた。
「まいどあり。だが、このことは内緒だぞ?」
「ああ、分かっている」
そして俺たちは店を出た。
財布の中身を確認すると2000G減っていた。
まあこれくらいなら予想の範囲内だ。
「ちょっと、何で財布ぽんと渡しちゃうのよ?」
「だって俺、渡す前に中身あらかたポケットに入れたし」
「じゃあほとんど中身がない財布を渡したってこと?よかったあ」
そんなに無謀な奴に見えるのだろうか。
「ねえ、ふくろ見せて」
ナオが手を出す。俺はさっきもらった袋を渡した。
「あ、ほんとだ。カギが入ってたよ」
「じゃあそのカギは無くさないようにお前が持っていてくれ」
「OK~」