ばさっ。
ユキがテーブルの上に世界地図を広げた。

「さて、次はどこに行こう?」
ラダトームの宿屋での作戦会議も何度目になるだろう。
そろそろ他の街に行きたくなったのはユキもカイも一緒らしく
地図を見て次の目的地を決めることになった。
今までは、町の人の話で次に行く場所が何となく決まっていたけど
アレフガルドではそんな情報がほとんど得られなかったからだ。
「俺たちが今いるアレフガルドは、ここだ」
と、地図のやや左上にある四角い大陸を指差す。
「多分、この、岩山に囲まれているのがロンダルキアだと思うんだ」
ロンダルキア…ハーゴンの居城か。
こんな、どこからも入れなそうなところに
ぼくたちはどうやって行けばいいんだろう。
「…ムーンブルクはどこ?」
やっぱり気になるんだ…ユキが控えめに聞いた。
「ん?ああ、ムーンブルクはこの辺だな」
地図の真ん中よりやや左を指差す。
あの、沼に沈む城、火の玉になった王様が思い出される。
いつか、会わせてあげたい。そう思った。
「どこか行きたいところあるか?たまにはみんなで決めよう」
「そうねぇ、じゃあ、ここ」
ユキが指差したのは、地図の右側、真ん中あたりにある、大き目の島。
「ん?どうして?」
「深い意味はないんだけど。
これだけ大きい島ならお城とかあるかなって」
「あー、なるほどな。人がいっぱいいれば情報も得られる。ナオは?」
いきなり話を振られた。
「あ、うん。…じゃあここ」
右下にあるふたつ並んだ小さい島を指差した。
「ふむ。…何か理由は?」
「え、いや、特にないけど」
ふたつ並んで仲良しそうだったから、なんて言えるか。
絶対笑われるに決まってる。
「よし、じゃあ、明日の朝出発しよう。
アレフガルドを発って東に舵をとり、大陸に沿って進む。
この大きい島に行って、その後で
ふたつ並んだ仲良し島、それでいいか?」
カイの方をちらっと見るとにやっと笑われた。…ばれてるし。
「かまわないわ」
「うん、いいよ」
「じゃあちょっと早いけど休むか。今日は疲れたしな。
俺はもう寝る。おやすみ」
そう言うとカイはさっさと寝室に行ってしまった。
「ぼくたちも休もうか、ユキ」
ユキの方を見ると、じぃっと地図を眺めている。
視線の先にあるのは…さっきカイが指差したムーンブルク。
ユキの中では今でも美しい城なんだろうな。
「…ユキ?」
びくっとこっちを振り向く。気付いていなかったらしい。
「あ、ごめんなさい。ぼーっとしてたわ。なあに?」
「ううん、何でもない。…そろそろ休もうか」
「ええ、そうね。おやすみなさい。また明日」
「また明日。おやすみ」
手を振って部屋を出た。