玉座に座っている者、それは
昔ロトの勇者の冒険の絵巻物で見た竜王にそっくりだった。
でも、変ね。
竜王はあの時にロトの勇者に倒されたはず。
じゃああそこにいるのは何者なのかしら。
「とりあえず話してみるか」
カイも同じことを思ったらしい。
ゆっくりと玉座の前に行くと
「よくきたカイよ。わしが王の中の王、竜王のひ孫じゃ」
いきなり語りだした。

「ちょっと、なんか怪しいわよこいつ。
名乗ってないのに名前知ってるし」
「ぼくたち有名なのかなぁ?」
「とりあえず続きを聞いてみるか」
「最近ハーゴンとかいうものが偉そうな顔をしていると聞く。実に不愉快じゃ」
…悪者にも派閥ってあるのかしら?
てっきり悪は悪で仲良しなのかと思っていたけれど、そういうわけでもないのね。
「もしわたしにかわってハーゴンを倒してくれるなら
いいことを教えるが、どうじゃ?」
取引を持ちかけられている…のかしら?
情報は大事よね…とりあえずハーゴンを倒すのは目的のうちな訳だし…
そんなことを考えていたら後ろからカイの声がした。
「断る」
「ちょ、ちょっとカイ、いきなり断らなくてもいいんじゃない?」
「魔物と取引なんかできるか」
「そうは言ってもさー」
「そうか、嫌か。お前は心の狭い奴だな」
ぴしっ
カイのこめかみのあたりに青筋が浮いた。
「…魔物に…心が狭いと言われた…」
なんかぷるぷる震えてるけど…怒ってるのかしら。
「カ、カイ、落ち着いて。
多分、勇者に取引を持ちかけるのは竜王家の家訓なんだよ」
「そ、そうよ。ロトの勇者だって世界の半分を持ちかけられたらしいし」
「…」
ぎろっ
カイが竜王のひ孫を睨んで言った。
「…受けてやってもいいぞ」
「そうか、本当はそなたのような心のせまい者たちに頼むのは
気が引けるのだが…」

…一言多いわ。またカイの顔が険しくなってきたみたい。
そんな事にはお構いなく竜王のひ孫は語りだした。
魔物でも空気を読んでほしいわ。
「かつてメルキドと呼ばれた町の南の海に、小さな島があるはず。
まずそこに行け!」
「そこには何があるのかしら?」
「さあな、自分の目で確かめるがよい」
「えー教えてよーケチー」
とりあえずこれ以上話しても収穫は無さそうね。
でも、せっかく来たのだから、頂くものは頂いておきましょう。
わたしたちは部屋の隅にある、カギのかかった部屋に入り
地面のバリアをナオの
トラマナで無効化し、
宝箱から世界地図を手に入れ、
リレミトで地上に戻った。
メルキド…この地図からすると…ここから南東ね。
宿屋で一休みしてから行くことになりそう。
一体何があるのかしら。