どうして船ってもんはこう、ゆらゆら揺れるんだろうな。
むかむかする胸をおさえて
そんな事を考えながら座っていたら
向こうからユキが歩いてきた。
あまり情けない所を見せたくもないんだが。
とりあえず、やあって感じに手を上げてみた。
「調子はどう?」
「…ん?」
「ナオに聞いたの。…本当に大丈夫?顔が青いわ」
俺、そんなにやばい顔してるのか?
「ん、ちょっと気持ち悪いが…そのうち慣れる」
「なら、いいんだけど…。
もうすぐアレフガルドに着くと思うから
街で少し休みましょう」
「そうしてもらえると…助かるな」
「ううん、気にしなくていいのよ」
「あの、聞きたいことがあるんだけど」
「ん?なんだ?」
何だか思いつめた顔をしている。どうしたんだ?
「たいしたことじゃないんだけど、えーと、あの、
…わたしって、ピリピリしてるのかしら?」
何を聞くかと思えば。
「ナオに何か言われたのか?」
そう聞くと、ぷるぷると首を振る。
「ううん、そういうわけじゃないんだけど…」
「うーん、そうだなぁ…しいて言うとすれば…」
「すれば?」
「美人だから、黙ってると冷たく見えるかもしれない」
「え?」
え?なんて言いながら顔がぱっと輝いている。
「あ、いや、何でもない」
「よく聞こえなかったからもう一度」
「さあ、なんて言ったんだったかなー。
忘れちゃったなー」
「えーわたしもう一度聞きたいわ」
腕のあたりを軽く掴んでゆさゆさと揺さぶられた。
…しっかり聞こえてるんじゃないか…。
「あー揺らすな気持ち悪いやめろやめろ」
「あ…ごめんなさい…」
あーむかむかする…。
「…それでいいんじゃないか?」
「え?」
「大丈夫だと思うぞ」
「…カイ…」
「お」
「?」
「陸が見えてきた。もうすぐ着くな」
「ほんとね。じゃあわたし、ナオを呼んでくるわ」
「ああ。それじゃ」
ユキはたたたっと音を立てて走っていった。
何でこの揺れる船であんなに元気なんだ…。
ようやく陸に上がれる…。
この船酔い、何とかならないもんかなぁ。
船乗りの奴らは船酔いなんてしないんだろうか…。
しかし、自分で言うのも何だけど…
さっきのはかなりわざとらしかったな。
なーにが「忘れちゃったなー」だよ…はぁ、恥ずかしい。
何だか調子狂うな。