狭くて薄暗い階段を下りるとそこは小さな教会だった。
こんな僻地(しかも地下)にある教会に需要があるのかなぁ?
神父さんの後ろに地上に出る階段が見えた。
ああそうか、きっとここは教会と言うより関所のようなものなのかも。
通路のように通り抜けるのも何だか悪い気がしたから
「失礼しまーす」とひと声かけて横を通り過ぎて階段をのぼった。
地上に出て振り返ると、さっきの入り口が海岸の向こうに見えた。
やっぱりこのほこらを通らないと先には進めなかったみたい。
当初の目的どおり西に向かって進むと
広大な砂漠に出た。
見回して見ても建物のようなものは辺りに無いみたい。
「…行き止まりか」
ぼそっとカイが呟いた。
西にまっすぐ歩いたら海岸につきあたって先に進めない。
南をみると険しい岩山。
「北に行くか」
ぼくたちは北に進路を変えた。
「暑いわね。こう暑いと喉が渇くわ」
「ユキのかっこう、暑そうだもんねー」
「…お気に入りなのよ」
「そっか」
ユキの服はどう見ても冬物に見えるんだけど
あせもとかできないのかなぁ。
ざくざくと砂の熱さに耐えながら歩いた。
「あ、オアシスよ」
ユキの指差す先には小さな泉があった。
確かに喉は渇いたけど…ここの水飲めるのかなぁ?
そう思う間もなくユキが泉に向かって駈け出した。
「お水ー」
腕まくりをして手ですくってごくごくと水を飲んでいる。
何だかぼくの持っていたお姫様のイメージと
ちょっとかけ離れてるんだけど。
お姫様ってこういう自然の、というか外にある水って
飲まないんじゃないかと勝手に思っていたんだけど
…ま、いいや。
「おいしいわよー。ふたりは飲まないの?」
本当においしそうに水を飲むユキを見ていたら
何だかぼくの喉も渇いてきて
横に並んでごくごくと水を飲んだ。
「…おいしい」
こんな暑い砂漠の真ん中にあるのになぜか
水は冷たくてちょっと甘かった。
「おいしいわねー。カイも飲みましょうよ」
「…あぁ」
カイも無言でごくごくと飲む。
水分補給もして少し元気になった気がした。
立ち上がり再び北を目指す。
今まで砂漠を歩いたくらいと同じくらいの時間をかけて
ぼくたちは砂漠を抜けた。
オアシスはきっと砂漠の真ん中あたりにあったんだ。
お水おいしかったなー。
砂漠を抜けると暑さは少しましになり
少し楽に進むことができるようになった。
砂に足をとられることもなくなったので足取りも軽く
ぼくたちはひたすら北を目指した。
「…ずいぶん歩いたな」
砂漠を出てからけっこう歩いた気がする。
時間はよくわからないけれど、多分
サマルトリアからリリザの町くらいの距離は歩いたんじゃないかな。
「何だかちょっと疲れちゃった。少し休まない?」
提案してみた。
「待って。向こうに何か見えるわ」
…あっさり却下されちゃった。ふたりともタフだ。
「ん?何だ?ちょっと行ってみよう」
「ちょっと待って、ぼくも行く」
その「何か」のふもとに来た。
「…」
無言で見上げるカイ。
そこには高い塔。
目の前は海峡で向こう岸に渡る手段は見当たらない。
そして、向こう岸にもこちら側と同じくらい高い塔があった。

「とりあえず入ってみましょう」
「うん、そうだね」
そしてぼくたちは塔の中に入った。
この間の風の塔よりは狭くて、ぐるっと見回すと
1フロア全部が見渡せるくらいの広さ。
1Fの真ん中あたりにひとりの男の人がいた。