何だか遠回りをしているような気がする。
そう思ったのは、町を出て橋を渡り
道なりに広がる草原を避けるように
森を抜けたあたりだった。
「どうして草原を通らないでわざわざ森を抜けるの?」
カイに尋ねてみたけれど
「ん、近道」
この一言であっさりかわされてしまった。
なんか引っかかる。
向かってる方向からしてそんなに近くもなさそうだし。
道は次第に険しさを増し、左手に岩山が立ちはだかる。
視界も暗くなる一方のこの道を通る理由がわからない。
ぱっとしない思いを抱えながらしばらく歩き
森を抜けると、砂地につながる小さな橋が見えた。
「行くぞ」
すたすたと橋を渡るカイに遅れないようについていく。
ふとナオの方を見ると、一瞬だけ後ろをちらっと振り返っていた。
「?」
その目はわたし達が通らなかった方の草原を向いていた。
そこには一体何があるのかどうしても知りたくなり
ナオの視線の方に目を走らせるとそこには
沼地の真ん中に今にも崩れそうになっているお城があった。
そこで分かった。
町で二人が内緒話をしていたこと。
不自然な道を通っていた理由。
ふたりの気遣いに胸が熱くなる。
「お前の親父はまだ生きている。
人魂になって、今も、廃墟となったムーンブルクの城を漂っている」
カイのセリフが頭をよぎった。
あのお城ではきっとお父様がいまも
わたしを待っている。
会いたい。お父様に会いたい。…けれど。
わたしは…まだ帰れない。
「ユキ?どうしたの?」
立ち止まるわたしを見て不思議そうにナオが言った。
彼らの気遣いを、遠回りを無駄にしてはいけない。
「ううん、なんでもないわ。行きましょう」
橋を渡り、心の中でそっと誓いをたてる。
絶対にハーゴンを倒して、お父様や城のみんなの仇をとる。
わたしはひとりじゃない。がんばらなきゃ。
海岸にある小さなほこらにカイが入っていくのが見えた。
わたしも少し遅れてそのほこらの地下に通じる薄暗い階段をおりた。