よく晴れた日だった。
わたしはお父様と中庭でお茶を飲みながら
お話をしていた。
「王様!お逃げくださいっ!」
突然兵士の声。少し遅れて地震がおこり、城全体がぐらぐらと揺れる。
どーん、という轟音。城のみんなの悲鳴。
一体何がおこったのだろう。
中庭の入り口が向こう側から破られ、羽の生えた化け物がこっちに飛んできた。
ぎらぎらとした目、耳まで裂けた口。
震えが止まらない。どうしよう、どうしよう、どうしよう。
わたしはお父様の後ろに隠れた。
「さてはハーゴンの手のものか!」
「クケケ、そのと~おり~。ロトの子孫を根絶やしにするのだ~♪」
「そうはさせん!ユキ、お前は後ろの階段から逃げるのだ」

どんどん魔物が増えてくる。
お父様は魔法で撃退していたけど、数が多すぎる。
護衛の兵士もひとり残らずやられてしまった。
「早く!早く行け!」
わたしは促されるままに階段を駆け下りた。ひんやりとした地下の空気が体を包む。
地下には見たこともない魔導士がいた。
わたしに向けられる杖。その光に包まれ、わたしの意識は途絶えた。
「ユキ…お前だけは生きてくれ…」
これがムーンブルク王の最後の言葉だった…。