塔から帰って宿に泊まった翌日。
作戦会議を開いた。それほど大げさなものでもないのだけれど。
「で、これからどこに行くの?」
「うーんそれなんだが」
「…なあに?」
「とりあえず西の方に向かってみようかと思っているんだが」
とりあえずって何かしら。
「西に何かめぼしいものでもあるのかしら?」
「いや、特に無いんだが。それ以外の3方向は既に行ったから
あとは西しかないなと」
「あーなるほど。じゃ、行ってみようか」
「そうね」
あ、そうだ、思い出した。
「ねぇカイ、出かける前に買ってほしい物があるんだけど」
「ん?」
「道具屋さんで聖なるナイフを売っていたの。
残念ながらこの町では杖は扱ってないみたいね。
そろそろひのきの棒より強い武器がほしくて。
…だめかしら?」
「いや、だめじゃないが。…じゃ、これで買ってくるといい」
カイから財布を渡された。
「うん、ありがとう。すぐ戻るわ」
ナイフを買って戻ってくるとふたりが何か
話しているのが見えた。
…何の話かしら?
「あ、ユキ、おかえりー」
「ただいま。何の話してたの?」
「あ、え、いや、なんでもないよー」
あからさまに怪しい。
「ナオ、俺たちがユキの悪口言ってたなんてばれたら
宿屋の裏の路地に連れ込まれたあげく
魔法で眠らされてぼこぼこにされるぞ」
「…なんですって?」
なんかすごい物騒なことを言われてるような気がするんだけど。
「いや、なんでもない。ナイフ買ったか?じゃ、行くぞ」
「すごい怪しいんだけど…?」
なんかいつもより早口で、会話を切りたがってるように見えるんだけど。
「気のせいじゃないか?それより」
カイが目の前に手を出す。何だろうと思ったが、よく考えたら
まだ財布を返していなかった。
「あ、ごめんなさい」
急いで財布を渡す。
何の話だったかはすごく気になるけれど、話したくないなら仕方が無いわ。
「じゃ、行きましょうか」
「うん、そうだね」
そしてわたしたちは西に向かって出発した。
振り返るとムーンブルクの兵士の彼がいたので手を振った。