カイが情報集めに行って
ユキがどこかに行ってしまったので
ぼくは仕方なくひとりで宿に戻った。
よかったなぁ。
ユキ、もとの姿に戻って。
がんばった甲斐があったってことかな。
しかも、ぎゅーって。ぎゅーって!
もしかして、ユキ、ぼくのこと好きになったのかなぁ?
そうだといいなぁ。
ぎぃっ
変な音をたててドアが開いて、ユキが入ってきた。
「あ、おかえりー」
「ただいま。すぐそこでカイに会ったわ」
「そうなの?カイもおかえりー」
「…ただいま」
ちぇっ、ふたり一緒だったのか。何だかつまんない。
でも…ぎゅーだし!ぼくがんばる。
「ねぇカイ、なんか情報あった?」
「…あぁ、風のマントについて聞いてきた。
手に入れておけばいつか役に立つかもしれない。
ここから近くの風の塔にあるらしいから、
明日それを取りに行こうと思うんだが
体は平気か?」
「あ、うん、ちょっとまだ痛むけど、明日になれば多分平気だと思う」
「あら?ナオ、ケガしてるの?ちょっと見せて」
「え、いいよ、大丈夫。平気だから」
「いいから見せなさい」
ぐいっと手を捕まれる。
「ずいぶんひどい傷ね。ほっといちゃだめじゃない」
「…ごめん」
「ベホイミ」
「え?」
ぱぁっと光が傷口を包んだかと思うと、きれいに治ってしまった。
「ユキ…ベホイミ使えるんだ…すごい」
「たいしたことないわ」
「ぼく…まだできない…治してくれてありがとう」
「どういたしまして。ゆっくり休んでね」
「うん…」
…なんだか自信なくしちゃった…。
でも、ぎゅーだし!…もっとがんばらなきゃ。
「じゃ、そろそろ休むか。ユキ、隣の部屋も借りたから
あっちで休むといい。風呂もあるってさ」
「ありがとう、じゃ、そうさせてもらうわ。
でも…覗いたらベギラマよ」
「ご、ごめんなさいっ!」
「…何でお前が謝るんだよ」
「…ナオ?覗く気だったの…?」
ユキの目が一瞬きらっと光った。…怖い。
「い、いえ!覗いたりしません!」
「そう…ならいいわ。でもわたし、残念ながら
ベギラマ使えないのよね。それじゃ、また明日」
ひらひらと手を振って、ユキが隣の部屋に行ってしまった。
はぁ…しくじった気がする…。
「…ぼくそろそろ寝る…おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
…
…
夜中に何か声が聞こえた気がして目が覚めた。
…隣の部屋から…?
ユキ…眠れないのかな?
音を立てないようにそうっと隣の部屋を覗く。
「…ぐすっ…ひっく…」
泣いてる…!
「…お父様…ひっく…ごめんなさい…
助けることができなくて…ひっく…ごめんなさい…
必ず…わたし…ハーゴンを倒してみせるから…ひっく…
わたしたちのこと…守って…お父様…」
見てはいけないものを見たような気がして
居たたまれなくなって部屋に戻った。
ふとんにもぐってちょっと考えた。
ユキは…王様が人魂になったなんて知らないんだ。
知ったらどうするんだろう…。
どんな姿でも会いたいと思うんだろうか…。
いろいろ考えているうちに、いつのまにかぼくは眠りに落ち
気がついたら夜が明けていた。