武器屋で武器を揃えた俺たちは
街の南西にあるというムーンブルクの城に向かった。
とは言っても、ナオは武器屋に来なかったから
適当に買っておいた武器を渡しただけなのだが。
道すがら、ナオが話し掛けてきた。
「ねぇカイ」
「ん?なんだ?」
「…カイ、犬きらいなの?」
「…あぁ」
「そっかぁ。もしかして昔噛まれたりした?」
「そ、そんなんじゃねぇよ」
「えー怪しいー。そう言えばローレシアの街に犬いたよね。
あの子にやられたとか?」
「ちがう!いいかげんにしろ」
「ふーんそうなんだー」
くすっと笑いながらこっちを見てくる。ああ憎たらしい。
「ちがうって言ってるだろ」
拳を振り上げる真似をする。
ほんとに殴ったりはしないが。
「でもさー」
「ん?」
「さっきの子はおとなしかったし平気だと思うよ」
「しつこい」
「んー、なんだかねー、不思議な感じがしたんだ」
「不思議?」
「うん。えーとね、あの子、目がきらきらしてて、深いって言うか
なんかどこか違うような感じ」
「分からないな。犬はぜんぶ一緒に見えるぞ」
「そっか、ぼくの気のせいかな」
そうこうしているうちに遠くに城のような物が見えてきた。
一応クギさしておくか。
「…おい」
「ん、なーに?」
俺が立ち止まってナオの方を見ると、ナオもこっちを見た。
「あのな」
「うん」
「…これから先、何を見たとしても、忘れるな。
俺たちは勇者ロトの子孫だ。
俺たちが絶望したら、世界は終わりなんだ」
「…うん?いきなりどうしたの?」
「…いや、何でもない」
「変なの」
そして俺たちは城の方角に向けて歩き出した。