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    BBS変えました。前のはこちらです。

     

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    ローレシアの王子 カイ (31)
    サマルトリアの王子 ナオ (33)
    ムーンブルクの王女 ユキ (26)
    未分類 (2)

     

    記事(上に行くほど新)

    ナオ65.放浪の果てに。
    ユキ64.月のかけら。
    ナオ63.テパの朝。
    カイ62.山奥の街へ。
    ユキ61.雨露の糸。
    ナオ60.いらっしゃいませぇ。
    カイ59.コスプレ男。
    ユキ58.一番星になって
    ナオ57.何してたの?って聞いてみた。
    ユキ56.魔道士の杖。
    カイ55.強すぎる。
    ナオ54.祈りの指輪。
    ユキ53.専用の。
    カイ52.怪しい老人。
    ナオ51.逃げ出してしまったんだ。
    カイ50.ヤミ。
    ユキ49.ペルポイでお買い物。
    ナオ48.世界樹。
    カイ47.抜けない。
    ユキ46.ちんどんやになりました。
    ナオ45.怪しい神父。
    カイ44.複雑。(50expressions-16)
    ユキ43.タシスンの犬。
    ナオ42.強い者が好きだ。
    カイ41.時事ネタも書きます。(パラレル)
    ナオ40.地図を広げて。
    カイ39.ぱぷぺぽ係、初仕事。
    ユキ38.どうして(50expressions-23)
    カイ37.まいったな(50expressions-29)
    ナオ36.任命。
    ユキ35.取引。
    カイ34.竜王の城にて。
    カイ33.お隠れになりました。
    ナオ32.ラダトームの城では。
    カイ31.ゆらゆら。
    ナオ30.無理してない?
    ユキ29.北へ行こうらんららん。
    カイ28.ドラゴンの角。
    ナオ27.砂漠を越えて。
    ユキ26.遠回りの理由。
    カイ25.内緒話。
    ユキ24.次の目的地はどこ?
    ナオ23.風の吹く塔。
    カイ22.呪文かぁ。
    ナオ21.サマルトリア魔法フェスタ。(パラレル)
    ナオ20.だってぎゅーだよ。
    カイ19.王女の威厳。
    ユキ18.ありがとう。
    ナオ17.ぼくがやらなきゃ。
    カイ16.調子が狂う。
    ナオ15.もっと強く。
    カイ14.ラーのかがみ?
    ナオ13.認めたくないけど。
    カイ12.何を見たとしても。
    ユキ11.きみ、ひとりなの?
    ナオ10.かわいいなぁ。
    カイ9.ムーンペタへ。
    ナオ8.ローラの門を通るぞ。
    ユキ7.兵士との出会い。
    ナオ6.銀のカギの洞窟。
    ユキ5.ここはどこだろう。
    ナオ4.いやーさがしましたよ。
    カイ3.ったく、どこほっつき歩いてるんだあのアホは。
    ナオ2.夜逃げのように出発。
    ユキ1.ムーンブルク陥落。

     

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    命は明日枯れるかもしれないと思えば 今という瞬間の重みを知るだろう
    ラーのかがみ
    サマルトリアの王子 ナオ
    2.夜逃げのように出発。

    さっきの父上の話…本当なのかな。
    ムーンブルクのお城が襲われたって。
    ハーゴンとか言う奴が世界を破滅させる気だって。
    信じられない。だってお城はこんなに平和なのに。
    大体さ、世界を破滅させちゃったらハーゴンどこに住むのさ。
    悪者の考えることって分かんないよね。

    ムーンブルク…きっと無事だよね。
    あそこの王様だってロトの子孫。
    すごい強力な魔法を使えるって聞いた。
    きっと魔物なんかあっという間にやっつけちゃうよ。

    父上は珍しくおっかない顔をしてこう言った。
    「ローレシアの王子カイがこちらに向かっている。まもなく着くだろう。
     お前はカイと共に旅に出てハーゴンを倒し、世界を救うのだ。
     お前はロトの子孫なのだから。」

    は?もう向かってる?ロトの子孫だから悪者を倒せだって?
    じゃあ父上とローレシアの王様とふたりでハーゴン倒しに行けばいいのに。
    …もう歳だから無理なのかなぁ…。

    ぼくは本当は行きたくなかったんだ。…さっきまでは。
    父上はこう続けた。
    「ムーンブルクのユキ王女…どうしてるだろうなぁ。
     確かお前と同じくらいの歳だったよなぁ。
     あれは将来きっと美人になるぞ~。…生きてれば、な。」
    え?王女?美人?まじすか父上!

    それまで王女と言ったらうちのうるさい妹のナミしか知らなかったぼく。
    あいつすぐ泣くしすぐ父上に告げ口するし。嫌になっちゃうよ。
    そうかぁ、美人かぁ。

    追い討ちをかけるように父上。
    「お前がかっこいいところ見せたら王女もお前にイチコロだぞ。」
    そうだね!そうだよね!
    ぼくロトの子孫だもん。魔法だって剣だって使えるもん。
    きっとうまく行くよね。

    そうと決めたらぐずぐずしてられない。
    城の人の噂によると、ローレシアの王子のカイはすごいカッコイイらしい。
    剣の達人だとか寡黙でクールだとか大人だとか、そんなことばっかり。
    そう言えば昔からすましてる奴だった気がする。
    やばい。そんな奴と一緒に行ったらぼく引き立て役じゃん。
    カイが来る前に城を出発しなきゃ。
    ぼくひとりでユキを助けてふたりで旅をしてふたりで力を合わせて
    ハーゴンを倒してユキはぼくにぞっこんなんだ。カイなんか知るか。

    ぼくはまだ暗いうちに夜逃げのように城を出発した。
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    サマルトリアの王子 ナオ
    4.いやーさがしましたよ。

    サマルトリアの城を出たぼくは、
    とりあえず勇者の泉に向かう事にした。
    途中スライムとかおおなめくじとかがおそってきたけど
    何回か殴るうちにやっつけることができた。
    ぼく、剣ってあまり得意じゃないんだよね。
    カイならこんな敵すぱっと一発なんだろうな。
    剣得意だって聞いたし。
    あーぼくも強くなりたいなぁ。

    昔っからすましてて黙っててとっつきにくい奴だったなーカイ。
    城の女中に言わせると、そこがクールでかっこいいらしいんだけど。
    あんな奴のどこがいいのかな。
    魔法も使えるぼくのほうがかっこいいと思うんだけどなー。

    ユキ…大丈夫かな。
    最後に会ったのは、もう何年前になるだろう。
    ぼくはその頃まで、妹くらいしか
    同世代の女の子と話したことはなかった。
    話してみて、あいつとは全然違ってた。
    もう、比べる時点で間違いだってくらいに違ってた。
    髪の毛だってふわふわしてて、目もくりっとしてた。
    肌は雪のように白かった。あ、だからユキって名前なのかな。
    太陽みたいに笑ってたっけ。
    なんかあまくていいにおいがしたっけな。

    そんなことを考えながら歩いているうちに勇者の泉にたどり着いた。
    ぼくって方向音痴だったのかな、あはは。
    この水浴びたら、ぼくもっと強くなるのかな。うん、きっとそうだ。
    変なおじいさん、ぼくにもっともっと水じゃんじゃんかけて!
    ぼく、もっと強くなりたいんだ。
    おじいさんに水をかけてもらったついでに聞いてみた。
    カイはまだ来てないらしい。
    ふふん、ぼくの方がやっぱりすばやいんだ。
    この調子でユキとふたり旅だ。
    わくわくしちゃうなー。

    次はどこに行けばいいんだろう。
    ムーンブルクは確か南にあったはずだから、
    南に行けばいいにちがいない。
    うーん、ぼくって頭いい。

    南に歩いていたら変なほこらを発見した。
    中に入ると兵士に通せんぼされた。
    ぼくは自分がサマルトリアの王子ナオであるということ
    これからムーンブルクに行くので
    ここを通してほしいということを伝えた。
    でも、答えは
    「ここはローラの門。ふたりそろってから来てください」の一点張り。
    だーかーらー。ふたりそろうために通るんだってば!
    早くしないとカイに追いつかれちゃうよ。
    ねーえー、通してってばー。

    とりあえずその場は退散。
    あとで兵士が寝静まった時、とか
    よそ見した時、とかに通ろう、と思ったんだけど…。
    あいつら、いつ寝てるの?全然スキがないよ?
    はぁぁ。
    これじゃユキに会えないよ…。
    とりあえず今日は疲れたから、リリザの町に戻って宿に泊まろう。

    リリザの町の宿屋で横になってうとうとしていたら、
    誰かに名前を呼ばれて目が覚めた。
    寝ぼけまなこでぼーっと見てみたら、何年ぶりかに会うカイだった。
    会いたくなかったのになー。ちぇっ。
    とりあえず
    「いやーさがしましたよー」とか言っておくか。
    探してたのはこいつじゃないけど。
    どうやらこいつがいないとローラの門通れないみたいだし。
    しかし、昔に輪をかけて無口だねこいつ。
    さっきからぼくの名前と「…行くぞ」しか言ってないよ。
    絶対こいつ、むっつりすけべに違いない。うん、きっとそうだ。
    でも、しかたない。こいつがいないとユキに会えないんだ。
    ユキのことを聞いたら、こいつの目がふっと陰った。どうしたんだろう。
    昔けんかでもしてて会いたくないとか?
    ともかくこれでローラの門を通れるぞ!
    待ってろよーユキ。ぼくがすぐに会いに行くからねー。
    サマルトリアの王子 ナオ
    6.銀のカギの洞窟。

    リリザの町を出たぼくたちはローラの門に向かった。
    今度はふたりだから通してもらえるはず。
    もうすぐユキに会えるんだ!

    ん?カイがおじいさんとお話してる。
    早く行こうよ、ユキ待ってるよ。

    え?「ローレシアの南にあるほこらに行こう」って?
    やだよ、早くムーンブルク行こうよ。
    え?なに?
    「お年寄りの言うことは聞くもんだ」…あっそ。
    しかたないな、僕ひとりじゃここ通してもらえないし
    何があるかは知らないけど行ってみるか。
    ついでにカイの剣の腕前も見てやれ。お手並み拝見。

    …うわぁ、すごいや。
    カイ、めちゃめちゃ強い。
    スライムだってドラキーだって全然へっちゃらみたい。
    すごいや、かっこいいな。
    ぼくもあれくらい強かったらよかったのにな。

    しばらく歩いてほこらに着いた。
    ほこらにはさっきのおじいさんとそっくりなおじいさんがいた。
    兄弟なんだってさ。
    そのおじいさんが言うには、湖の洞窟に銀のカギがあるとか。
    銀のカギかぁ、世界中を旅するんだったらカギって必要だよね。
    取りに行こうか。
    …素朴な疑問なんだけど、家に銀のカギの扉つけてる人って
    どうやって開けてるのかなぁ。
    カギ持ってるなら僕たちに貸してほしいよ。

    それからずいぶん歩いて湖の洞窟に着いた。
    洞窟なだけあって、外より敵が強いみたいだ。
    さっきまで余裕見せてたカイも、ちょっと攻撃食らって擦り傷作ってる。
    道具袋から薬草を出そうとしてたから、「ちょっと待って」と止めて
    ホイミをかけてやった。
    あまり効果は大きくないけど、擦り傷くらいなら治せる、そう言ったら
    「…すごいな、魔法」そう言われた。
    魔法も剣も人には向き不向きがあるらしい。
    ぼくはどっちもそれなりに出来るけど、やっぱりカイには剣の腕ではかなわない。
    カイも魔法使えないみたいだけど、ひとりで旅してるわけじゃないから
    別にいいと思うんだ。

    洞窟の中をほとんど廻ってみたけど、カギらしきものは見当たらなかった。
    「…あっちに行ってみるぞ」
    カイが道の奥の暗がりを指差した。
    どうやら部屋みたいになってるようだ。中に入ったら小さな泉が涌いてて
    その横にカギが落ちてた。

    銀のカギだ。

    あった!銀のカギだ!
    カイに渡そうとしたら、「お前が持ってろ」だってさ。
    なくしそうで嫌なのかなぁ。
    まあいいや、しまっとこ。
    サマルトリアの王子 ナオ
    8.ローラの門を通るぞ。

    さて、カギも手に入れたし
    今度こそローラの門を通るぞ。
    いいよね?いいよね?
    「…あぁ」

    ローラの門を通るぞ。

    ふたり揃っていたから今度は兵士も
    すんなりと通してくれた。
    よかったよかった。
    先へ歩いていくと下に下りる階段があった。

    階段を下りていくと薄暗い洞窟に繋がっていた。
    やだなぁ、なんだかじめじめするや。
    お、右側に明かりが見えるぞ?
    この先にいくときっとムーンブルクに出るんだ。
    ぼくは思わず走り出していた。

    「まてっ!」
    後ろからカイがどなる声がした。

    するするっ
    いきなりぼくの足元から何かが這い上がってきた。
    「うわあぁ!」
    キングコブラだ。
    うわあぁ!
    2体のキングコブラがぼくの足に絡みつく。
    「ナオ、そこを動くな!」

    動くなったって…
    うわああ、腰のあたりまでのぼってきたっ。
    ちくっ
    げ、足首を噛まれたぞ。なんだかくらくらする。
    あれ…毒にかかっちゃったかな…
    なんだか気が遠く…

    足が立たなくなってしりもちをついてしまった。
    キングコブラはどんどんぼくの体をのぼってくる。
    二股に分かれた舌がちろちろと動くのが見える。

    「わああぁぁぁ!」
    ずばっ
    え?
    見るとコブラたちは全部真っ二つになっていた。
    カイが全部倒してくれたみたいだ。

    カイがすっと手を差し出した。
    その手を握ってやっと立ち上がる。
    「…大丈夫か?」
    「あ、うん…ありがとう」
    「…毒」
    「あ、ほんとだ。ちょっとまっててね。毒消し草あったっけかなぁ」
    「…覚えたって言ってなかったか?」
    「そうだった!すっかり忘れてた」

    赤黒い血が流れている足に手をあて精神を集中する。
    キアリー
    すぅっと毒が引き楽になる。

    「…さて」
    「ん?」
    ごんっ
    いきなり殴られたぞ。しかもグーで。痛ぁぁ。
    「な、なにすんだよっ」
    「馬鹿野郎。ひとりで先に行くからだ。危ないだろ」
    「…ごめん」

    結局さっきの明かりの先は離れ小島への出口、つまりハズレだった。
    残念。
    入口から長い通路をまっすぐ歩いてようやくぼくたちは
    ローラの門を抜けることができた。
    サマルトリアの王子 ナオ
    10.かわいいなぁ。

    町に入ると端っこの方に兵士の姿が見えた。
    すごいなぁ、ここの町。
    兵士の警備がついてるなんて。
    きっとこないだムーンブルクのお城が襲われたことで
    街の人たちも警戒してるんだね。

    ずっと歩きどおしだったからちょっと疲れちゃった。
    休めるところはないかなぁ。

    あ、少し先の方に木陰があった。
    あそこでちょっと休んでいこうっと。
    カイはどうするのかな?

    「あぁ、俺はいい。ちょっと情報集めてくるから
     水でも飲んでゆっくりしてるといい」

    …?
    なんか珍しく優しいぞ?
    どうしたのかなぁ。
    ま、いいや。

    お?
    犬がいる!
    わぁ、かわいい。
    近くに行っても大丈夫かな?
    見に行ってこようっと。
    サマルトリアの王子 ナオ
    13.認めたくないけど。

    うそだろ?
    「…」
    目の前にはひどい匂いを発する毒の沼、そして
    沼の真ん中には今にも崩れそうな城があった。

    「カイ」
    「ん?」
    認めたくない、その一心で訊ねた。
    「…このお城は?」
    「ムーンブルクの城だ」
    「嘘だ!」
    「嘘じゃない」
    「だって、このお城どう見たって」
    廃墟だよ、のことばを飲み込んだ。
    言ったら本当になってしまうような気がした。

    「…行くぞ」
    カイは城に向かって進み、毒の沼に踏み込んでいく。
    ぼくも行かなきゃ。でも足がすくんで動かない。

    さっきのカイのことばが頭の中でこだまする。
    「これから先、何を見たとしても」
    そうだ。ぼくはまだ見てない。何も見てない。
    ユキを、ユキを助けなきゃ。
    そして毒の沼に足を踏み入れた。
    じゅっと足に毒がしみる。
    沼からは凄まじい腐臭が漂い、息が苦しい。
    足をとられそうになりながら、何とか城に入った。

    城の中もひどい状態だった。
    崩れかけた壁、焼け焦げた床、むせ返る血の匂い、
    開けっ放しになっている宝箱、倒れている玉座。
    ふと先の方を見ると、大きい火の玉がゆらゆらと漂っていた。

    カイが火の玉に向かって歩き出す。
    「危ないよ、襲われたらどうするんだよ」
    声をかけても聞かずに進む。
    仕方がないので後ろをついていった。

    「…誰か…おるのか?」
    不意にどこからか声が聞こえた。
    あれ?ここにはぼくとカイしかいないよね?
    空耳かと思って耳をすますと、声は火の玉から聞こえてきた。
    もしかして…人魂?

    「誰だ」
    カイがいきなり人魂に話し掛けた。
    でも、誰だって…他に言い方はないのかなぁ。

    人魂は静かに語りだした。

    王様?
    …わしはムーンブルク王の魂じゃ…
    …わが娘ユキは…呪いをかけられ
    …犬にされたという…おお…口惜しや…


    王様?この人魂は王様なの?
    え?ユキが犬に?犬…?
    まさか!
    頭にさっきまで一緒にいたムーンペタの犬が浮かぶ。
    あの犬が…もしかしたらユキ?
    そんな、そんなことって。

    カイが王様の前で片膝をついて言った。
    「…安心してください。
     姫は…俺たちが必ず助けます。だから
     …もうゆっくりと休んでください」
    カイが王様に誓う。
    ぼくも心の中で決意を新たにした。

    犬になってしまったというユキ。
    今…どこにいるんだろう。
    どうやってもとの姿に戻せばいいんだろう。
    ぼく、そんな魔法知らない。
    どうすればいいんだろう。
    サマルトリアの王子 ナオ
    15.もっと強く。

    城を出たぼくたちは、ラーのかがみがあるという
    毒の沼地を捜して、東の方に向かった。

    ぼくはカイにどうしても聞いておきたいことがあったので
    歩きながら切り出した。

    「ねぇ、カイ」
    「ん?」
    「…ムーンブルク壊滅のこと、知ってたんだろ?
     どうして教えてくれなかったの?」

    突然、カイが立ち止まった。
    くるっと振り返りじっとぼくを見ている。
    「…」
    …何を言おうとしているんだろう。

    「…城に、ムーンブルクの兵士が来たんだ。
     彼は、すぐに手当をしないと助からないような重傷で
     でも、それよりも先に俺の親父に会わせてくれと」

    初めて聞く話だった。
    てっきりぼくは、ムーンブルクから伝書鳩が飛んできて
    「モンスターにこの間襲われた。そちらも注意」
    その程度のことかと思っていたんだ。
    カイの話は淡々と続く。

    「彼はムーンブルクの壊滅を親父に告げると息絶えた。
     そして俺の親父は俺に打倒ハーゴンの命令を出した」

    「ナオ」
    突然カイの眼光が鋭くなった。
    「お前は何の為にこの旅に出たんだ?」

    「ぼくは…」

    …何も言えなかった。
    人の死、世界の破滅、そんなことを想像すらせずに
    ピクニック気分で旅に出た自分が恥ずかしかった。

    「俺はもう目の前で人が死ぬのを見たくない。
     だから、絶対にハーゴンを倒してこの戦いを終わらせる。
     それが…勇者ロトの子孫である俺たちの務めじゃないのか?」

    いつものようにぶっきらぼうにではなく
    何かを教えるようにカイは語っていた。

    「お前に覚悟が出来ないまま知らせたくなかった。
     長い旅の中でこれからもっと辛いことがあるかもしれない。
     怖いなら…サマルトリアに帰ってもいいんだぞ?」

    …帰る?サマルトリアに?
    突然目の前に提示された選択肢。
    居心地のいいお城が心に浮かんで消えた。
    次に心に現れたのは…
    涙を浮かべてぼくに何かを訴えていたムーンペタの犬だった。
    …ユキを…助けなきゃ。

    顔を上げてカイの目を見た。
    あんなに強い目はまだ出来ないけれど、カイに言った。

    「サマルトリアには帰らない。
     ぼくも…ロトの子孫だ」

    「…そうか」
    そう言うとすたすたと歩き出した。
    ぼくも慌てて後を追う。

    いつか、ぼくもカイみたいに強くなれるかな。
    力だけじゃなくて気持ちも。
    もっと、もっと強くなりたい。

    顔をあげてカイの背中を見た。
    肩越しに橋が見えた。
    橋の向こうには…毒の沼地。
    きっとあそこだ。

    目の前の背中をかけ足で追い越した。
    サマルトリアの王子 ナオ
    17.ぼくがやらなきゃ。

    毒の沼に一歩足を踏み入れると
    じゅっと白煙が立ち上った。
    ブーツの間から緑色の泥水が入ってきて
    触れたところが溶けたように熱くなった。

    「ナオ!沼から上がれ!俺が探す!」
    後ろからカイの慌てた声が飛んできた。
    振り返るとカイがこっちに向かって走っているのが見えた。
    でも。

    「いい、ぼくが探す!カイはそこにいて!」
    「!」
    びっくりしたようにカイの足が止まった。

    沼から立ち上る腐臭にむせそうになりながら叫んだ。
    「ぼくもがんばらなきゃだめなんだ。
     このままじゃぼく、前に進めない。
     もう、甘えてる場合じゃないんだ。
     ごめん…もう少し待ってて」

    手で沼の中を探り、足の痛みに耐えながら返事を待つ。
    じわじわと体力が奪われていくのが分かる。
    ずきずきして集中できなくてホイミが唱えられない。

    「…わかった。敵がきたら俺が何とかする。
     かがみを探すのはお前に任せた。
     …これ使え」

    ぽーんとカイが何か投げた。
    慌てて沼から手を抜き受け取ると、薬草だった。
    「頼むぞ」

    「え?」
    あのカイがぼくに頼むって言った。
    ぼくのこと、認めてくれたのかな。
    いや、認めてくれるかどうかは、ぼくがきちんと
    やることをやってからの話だ。
    …がんばらなきゃ。

    カイからもらった薬草を口に含みながら捜索を再開する。
    水の底が見えないから手探りでぜんぜんはかどらない。
    薬草もなくなって目の前がぼやけてきた。
    少しずつ沼の中央まで足を進めると、
    つま先が何かに引っかかって転びそうになった。
    え?今の何?
    急いでつま先のあたりに手を伸ばす。
    肩まで毒の沼に浸かった所で手が何かかたい物に触れた。
    掴んで沼から引き出してみると、それは
    金色の縁取りがされた、一枚のかがみだった。

    あった…!
    汚い沼の中にあったのに、かがみには傷ひとつなく
    沼の水を弾いてきらきらと輝いていた。
    「…あった…」
    かがみを高く掲げてカイに向かって
    「あったよー」
    そう叫んだらなんだか体制がぐらっと崩れた。

    ずるっ
    足元が滑って沼の中で転んでしまった。
    ずぶずぶと体が沈んでいく。
    沼の水がどろどろして思うように動けない。
    カイに助けを求めようとしたけど
    首のあたりまで泥に埋まってしまってうまく声が出せない。

    「ナオ、しっかりしろ!」
    「…カイ…?」
    カイがぼくの体を沼から引きずり出そうとしてる。

    沼から引きずり出されたぼくは
    カイがまたくれた薬草を食べて
    何とかしゃべることができるようになった。
    「カイ…ぼく…やったよ…」
    「…ああ、よくやった」

    体は沼の水でどろどろだけど
    足や腕は毒でずきずきするけど
    一歩前に進めたような気がした。

    「…かがみはお前が持っていろ。
     それでユキを助けるんだ」
    「…うん」
    「さ、町に帰ろう」
    カイがキメラのつばさをリュックから出して
    空に向かって放り投げた。
    次の瞬間、ぼくたちはムーンペタの町の前にいた。
    サマルトリアの王子 ナオ
    20.だってぎゅーだよ。

    カイが情報集めに行って
    ユキがどこかに行ってしまったので
    ぼくは仕方なくひとりで宿に戻った。

    よかったなぁ。
    ユキ、もとの姿に戻って。
    がんばった甲斐があったってことかな。
    しかも、ぎゅーって。ぎゅーって!
    もしかして、ユキ、ぼくのこと好きになったのかなぁ?
    そうだといいなぁ。

    ぎぃっ
    変な音をたててドアが開いて、ユキが入ってきた。
    「あ、おかえりー」
    「ただいま。すぐそこでカイに会ったわ」
    「そうなの?カイもおかえりー」
    「…ただいま」
    ちぇっ、ふたり一緒だったのか。何だかつまんない。
    でも…ぎゅーだし!ぼくがんばる。

    「ねぇカイ、なんか情報あった?」
    「…あぁ、風のマントについて聞いてきた。
     手に入れておけばいつか役に立つかもしれない。
     ここから近くの風の塔にあるらしいから、
     明日それを取りに行こうと思うんだが
     体は平気か?」
    「あ、うん、ちょっとまだ痛むけど、明日になれば多分平気だと思う」
    「あら?ナオ、ケガしてるの?ちょっと見せて」
    「え、いいよ、大丈夫。平気だから」
    「いいから見せなさい」

    ぐいっと手を捕まれる。
    「ずいぶんひどい傷ね。ほっといちゃだめじゃない」
    「…ごめん」
    ベホイミ
    「え?」
    ぱぁっと光が傷口を包んだかと思うと、きれいに治ってしまった。

    「ユキ…ベホイミ使えるんだ…すごい」
    「たいしたことないわ」
    「ぼく…まだできない…治してくれてありがとう」
    「どういたしまして。ゆっくり休んでね」
    「うん…」
    …なんだか自信なくしちゃった…。
    でも、ぎゅーだし!…もっとがんばらなきゃ。

    「じゃ、そろそろ休むか。ユキ、隣の部屋も借りたから
     あっちで休むといい。風呂もあるってさ」
    「ありがとう、じゃ、そうさせてもらうわ。
     でも…覗いたらベギラマよ」
    「ご、ごめんなさいっ!」
    「…何でお前が謝るんだよ」
    「…ナオ?覗く気だったの…?」
    ユキの目が一瞬きらっと光った。…怖い。
    「い、いえ!覗いたりしません!」
    「そう…ならいいわ。でもわたし、残念ながら
     ベギラマ使えないのよね。それじゃ、また明日」
    ひらひらと手を振って、ユキが隣の部屋に行ってしまった。
    はぁ…しくじった気がする…。

    「…ぼくそろそろ寝る…おやすみ」
    「あぁ、おやすみ」




    夜中に何か声が聞こえた気がして目が覚めた。
    …隣の部屋から…?
    ユキ…眠れないのかな?
    音を立てないようにそうっと隣の部屋を覗く。

    「…ぐすっ…ひっく…」
    泣いてる…!
    「…お父様…ひっく…ごめんなさい…
     助けることができなくて…ひっく…ごめんなさい…
     必ず…わたし…ハーゴンを倒してみせるから…ひっく…
     わたしたちのこと…守って…お父様…」

    見てはいけないものを見たような気がして
    居たたまれなくなって部屋に戻った。
    ふとんにもぐってちょっと考えた。
    ユキは…王様が人魂になったなんて知らないんだ。
    知ったらどうするんだろう…。
    どんな姿でも会いたいと思うんだろうか…。

    いろいろ考えているうちに、いつのまにかぼくは眠りに落ち
    気がついたら夜が明けていた。
    サマルトリアの王子 ナオ
    21.サマルトリア魔法フェスタ。(パラレル)

    もっち作者注:ここの話はパラレルです。
    原作では王女は城から1歩も外に出ていません。
    パラレルが苦手の方はご注意ください。
    なお、この話を飛ばしても進行上何の不具合もありません。

    次の話→カイ22.呪文かぁ。




    旅の準備も整い、風の塔に向けて出発しようとしていたら
    誰かに服のすそをつかまれた。
    誰だろうと思って振り返ると
    そこにはサマルトリアの城にいるはずの妹がいた。

    「おにいちゃん、わたしもつれてって」
    「は?だめだって言っただろ。
     ここまでお前どうやって来たんだよ。父上はどうしたんだ?」
    「んーとねえ、だめだだめだってうるさいから、カエルにしてきちゃった」
    「な、なんだってー?」

    「わたし、まほう使えるようになったんだよ。
     前おにいちゃん、まほう使えないからつれて行かないっていってたよね。
     使えるからつれてってつれてってつれてってよー」
    「…あのな、遊びに行くんじゃないんだ。
     それに大体、蛙ってなんだよ蛙って」

    「あのね、パパ、こないだ世界のまほうつかいを集めて
     サマルトリア魔法フェスタっていうのをお城でひらいたの。
     いっぱいまほうつかいがいればハーゴンもたおせるかもしれないって。
     それでね。海のむこうから来たえらいまほうつかいの先生に
     わたしもまほう教えてもらったんだ。
     このまちにだって、まほうつかって飛んできたんだよ」
    「じゃ、父上を蛙にする魔法も先生に教わったのか?」
    「うん」
    「すぐに戻してこい!お前は悪の魔女か!」
    「やだ!つれてってくれるまでうごかないから!」

    はぁ、…ため息が出る…。
    王様が蛙になって王女様が城から消えたなんて
    今頃サマルトリアは大騒ぎだろうなぁ。
    まったく、わが妹ながら、なんでこんなにわがままなんだか。

    「ごめん、もうちょっと待ってて。」
    小声でユキとカイにささやく。
    ふたりとも仕方ないなぁって顔でこっち見てる。

    「ナミ、父上もお城の人たちも、ナミがいなくなって心配してるよ。
     帰っておとなしくしてないとだめじゃないか。
     さ、キメラのつばさ買ってあげるから、お城に帰るんだ」

    「やだ!」
    そう言って差し出したぼくの手を振り払い、呪文を唱え始めた。
    レビテト!」
    ?聞いたことない呪文だな。何をする気だ?
    ふわっ
    ナミの体が少し地面から浮いて静止した。

    「…カイ、あの子浮いてるわね」
    「…ああ。こんな呪文あるのか?」
    「わたしの知るかぎりではこの世界にはない呪文ね」
    「…それ、やばくないか?」
    「…さあ?」

    「つれてってくれないなら、おにいちゃんもカエルにしちゃうんだから!」
    げ、それは困る。
    ふわふわ浮かびながらぼくの手を逃れてカイたちの方に飛んでゆくナミ。

    ぽかっ
    「いたっ。なにするのよっ!」
    カイが軽くげんこつで頭を叩いたらしい。
    「…帰れ」
    「さからうならあなたもカエルにしちゃうから!」
    ナミが手を高く振りかざした。やばい。カイが蛙になっちゃう。

    マホトーン!」
    ナミに向かって呪文を放った。
    「え?どうして?呪文が出ない」
    ほっ、成功したらしい。

    ちょっときつく言ってでも城に帰さないとだめだな。
    困ったな、どうしよう。
    「まかせて」
    横からユキの声がした。

    「ナミちゃん、わたしの話を聞いて」
    「やだ!あなたもわたしのこと叱るんでしょ?」
    「そうじゃないわ。あのね、あなたには
     わたしたちと冒険するよりもずっと大事な使命があるのよ」
    ユキ…一体何を言う気?
    カイと顔を見合わせたら、カイも不思議そうな顔をしていた。
    「…しめい?」
    「そうよ。ナミちゃんはお城に帰って、身につけた魔法の力で
     王様やお城の人たちを守らなければならないわ。
     ナオが旅に出ている今、王様を守れるのはあなただけなのよ」
    王様を守れる、その言葉のあたりでユキの顔がふっと翳った。
    ああそうか、ユキはきっと、王様を守れなかったことを後悔しているんだ。
    昨夜ひとりで泣いていた姿が浮かんだ。
    「…わたしが…パパを…まもる?」
    「そうよ。大変な使命だけど、できるわよね?
     ナミちゃんもロトの子孫だものね?」
    「うん、できる!わたし、パパのこと、まもってみせる!」
    「そう、頼りにしているわ。わたしたちが戻るまで
     大変だけどがんばるのよ」
    そう言ってにっこり微笑み、ナミの頭をなでた。

    「…すげぇ」
    「…うん。あんなに素直なナミ、初めて見た」
    「…それは兄貴としてどうかと思うが?」

    「おにいちゃん、わたし、お城に帰る。
     パパを元の姿に戻さなきゃ。
     じゃ、またね」
    そらひえーん!」
    ばびゅーん、ばびゅーん、ばびゅーん

    変な呪文を唱えてナミは空の向こうに飛んで行った。
    あいつ…どんな奴に呪文習ったんだ…?

    「こんな感じでいいかしら?」
    「え、あ、うん、ありがとうユキ」
    「ううん、仕方ないわ。まだ小さいし、ナオと離れるの、きっと嫌なのよ」
    「ユキ…あの、王様は」
    「言わないで!…ごめんなさい、もう少し待ってほしいの」
    「…わかった、ごめんね」

    やっぱりムーンブルクのお城のことは
    ユキにとってかなりショックだったんだろうな。
    いま、そしてこれから、ぼくにできることは何だろう。
    copyright © 2005 もっち all rights reserved.

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