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    BBS変えました。前のはこちらです。

     

    語り手

    ローレシアの王子 カイ (31)
    サマルトリアの王子 ナオ (33)
    ムーンブルクの王女 ユキ (26)
    未分類 (2)

     

    記事(上に行くほど新)

    ナオ65.放浪の果てに。
    ユキ64.月のかけら。
    ナオ63.テパの朝。
    カイ62.山奥の街へ。
    ユキ61.雨露の糸。
    ナオ60.いらっしゃいませぇ。
    カイ59.コスプレ男。
    ユキ58.一番星になって
    ナオ57.何してたの?って聞いてみた。
    ユキ56.魔道士の杖。
    カイ55.強すぎる。
    ナオ54.祈りの指輪。
    ユキ53.専用の。
    カイ52.怪しい老人。
    ナオ51.逃げ出してしまったんだ。
    カイ50.ヤミ。
    ユキ49.ペルポイでお買い物。
    ナオ48.世界樹。
    カイ47.抜けない。
    ユキ46.ちんどんやになりました。
    ナオ45.怪しい神父。
    カイ44.複雑。(50expressions-16)
    ユキ43.タシスンの犬。
    ナオ42.強い者が好きだ。
    カイ41.時事ネタも書きます。(パラレル)
    ナオ40.地図を広げて。
    カイ39.ぱぷぺぽ係、初仕事。
    ユキ38.どうして(50expressions-23)
    カイ37.まいったな(50expressions-29)
    ナオ36.任命。
    ユキ35.取引。
    カイ34.竜王の城にて。
    カイ33.お隠れになりました。
    ナオ32.ラダトームの城では。
    カイ31.ゆらゆら。
    ナオ30.無理してない?
    ユキ29.北へ行こうらんららん。
    カイ28.ドラゴンの角。
    ナオ27.砂漠を越えて。
    ユキ26.遠回りの理由。
    カイ25.内緒話。
    ユキ24.次の目的地はどこ?
    ナオ23.風の吹く塔。
    カイ22.呪文かぁ。
    ナオ21.サマルトリア魔法フェスタ。(パラレル)
    ナオ20.だってぎゅーだよ。
    カイ19.王女の威厳。
    ユキ18.ありがとう。
    ナオ17.ぼくがやらなきゃ。
    カイ16.調子が狂う。
    ナオ15.もっと強く。
    カイ14.ラーのかがみ?
    ナオ13.認めたくないけど。
    カイ12.何を見たとしても。
    ユキ11.きみ、ひとりなの?
    ナオ10.かわいいなぁ。
    カイ9.ムーンペタへ。
    ナオ8.ローラの門を通るぞ。
    ユキ7.兵士との出会い。
    ナオ6.銀のカギの洞窟。
    ユキ5.ここはどこだろう。
    ナオ4.いやーさがしましたよ。
    カイ3.ったく、どこほっつき歩いてるんだあのアホは。
    ナオ2.夜逃げのように出発。
    ユキ1.ムーンブルク陥落。

     

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    命は明日枯れるかもしれないと思えば 今という瞬間の重みを知るだろう
    ラーのかがみ
    ローレシアの王子 カイ
    3.ったく、どこほっつき歩いてるんだあのアホは。

    ハーゴンを倒すためにはロトの子孫の力を合わせる必要がある。
    そう考えた俺の親父は、サマルトリアに行き、王子ナオと共に
    ムーンブルクの王女ユキを探すように命じた。

    まぁ常識で考えれば、王子だし城にいるだろ。
    そう思ってサマルトリアに行ったはいいのだが…。

    いねぇし。

    いねぇ。
    城の者に聞くと「昨日まではいたんですけどねぇ」との答え。
    王子がそう簡単にほいほいと外出していいものなのか?
    (自分を棚に上げて言うことでもないが)
    ナオには妹がいるとのことなので、妹の話も聞くことにした。

    おにいちゃんのおともだち?
    「おい」
    「あー、もの売りに来た人でしょー?買わないからー。いーだ。」
    …思いっきりしかめっ面をされた…。説明せねば。
    「…兄貴はどこだ」
    「しらない人になんかおしえないもーん。
     お顔だってこわいし。あなたおにいちゃんのおともだち?」
    「いや、ちがうと思う(とりあえずそんなに親しいわけでもないしな)」
    「じゃあおしえなーい。
     どこかでよりみちしてるかもなんておしえないもーん」
    「そうか…邪魔したな」
    …俺の顔は怖かったのか…ちょっとショックだ。

    ナオはどこかで寄り道してるかも、と言うことは分かった。
    王子なんだから城にいろよな、まったく。

    さて、どうするかな。置いていくわけにも行かないし。
    とりあえずこの国の習わしとして、旅に出る物は勇者の泉の水を浴びる必要がある。
    そこにナオがいるかどうかは微妙だが、俺も水を浴びなければ。

    そんなわけで、勇者の泉に着いた。

    ひとあしちがいであった。
    爺に水をかけてもらったついでに聞くと、ナオも少し前にここに来たらしい。
    あーなんだかすれ違いだな。もう少し待ってろよまったく。
    爺の話によると、ナオは俺を訪ねてローレシアの城に行ったらしい。
    しかたない。ローレシアに戻るか。

    「親父、ナオは来ていないか?」
    「ふはははは、何を寝ぼけたことを。来ておらんぞ。
     大体奴の親父が言うところの女好き王子が、男のお前を訪ねて
     わざわざ来るわけが無いだろう。」
    はぁ…それもそうだよな。
    「とりあえずサマルトリアに戻ってみたらどうだ?」
    面倒だが戻るか。ついでにあの妹の顔も見てこよう。かわいかったし。

    やっぱりいねぇし。

    「おにいちゃん?いないよ。」
    「…そうか」
    「おにいちゃんわたしを置いて旅に出ちゃったの。
     わたしがまほうできないからって。ひどいでしょ?
     だからもう知らないっ」
    「悪い兄貴だな」
    …魔法使えない奴を差別するなよナオ…泣けてくる。
    「でも、お顔はこわくないよ」
    「…それはよかったな」
    やっぱり怖がられてるのか俺…自信なくすよな。

    さてどうしたものか。
    勇者の泉にいない、サマルトリアにもローレシアにもいない。
    あのアホどこほっつき歩いてやがる。
    あと行っていない所は…町か。
    そう言えばサマルトリアとローレシアの間に町があったな。行ってみるか。

    いたよ。町の宿屋でくつろいでやがる。人がこれほど探したのにこいつはっ。
    とりあえず話しかけるか。殴りたいが。
    「おい」
    「あ、もしかしてあなたはローレシアのカイ王子では。いやーさがしましたよ」
    いやーさがしましたよ。
    …探したのはこっちだっ。
    「ふたりで力を合わせてユキ姫を助けてハーゴンを倒しましょう!」
    まあいいか。殴りたいがとりあえず見つかったし。
    疲れたからひと休みするぞ。
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    ローレシアの王子 カイ
    9.ムーンペタへ。

    ローラの門を抜けるとそこは広い平原だった。
    いきなり明るいところに出たから目がチカチカする。

    「ねぇねぇ、はやくいこうよー」
    …どうしてこいつはこんなに能天気なんだ。
    「ねぇカイ、ユキきれいになったかなぁ。
     子供の頃会ったっきりだけど、かわいかったなぁ。
     あーはやく会いたいー」
    「…興味ないな」
    「あ、そうなの?そっかぁ」
    …心なしか安心したように見えるが…何なんだこいつは。

    「ところでさぁ、カイ、ムーンブルクのお城って行ったことある?
     ぼくないんだよね。
     すっごいきれいなお城だって聞いたから、ぼく楽しみにしてたんだ。
     魔物に襲われたって聞いたけど、王様強いらしいし大丈夫だよね?」


    こいつ…ムーンブルク陥落の話、知らないのか?
    それなら今までの能天気さも頷ける。
    きっと、かわいい王女と遠足気分で旅をして、何となく悪者を倒して
    かっこいーとか言われたい、なんて思ってるんだろうな。はぁ。

    ショック受けるだろうな、壊滅した城の様子見たら。
    王女が無事かどうかも分からないし。
    さて、どうするかな。

    「あ、町が見えてきたよ。行ってみようよ」
    「…あぁ」

    とりあえずまだ言わなくてもいいか。
    不完全な情報でむやみに不安にさせることもない。

    そして俺たちはムーンペタの町に入った。
    ローレシアの王子 カイ
    12.何を見たとしても。

    武器屋で武器を揃えた俺たちは
    街の南西にあるというムーンブルクの城に向かった。
    とは言っても、ナオは武器屋に来なかったから
    適当に買っておいた武器を渡しただけなのだが。

    道すがら、ナオが話し掛けてきた。
    「ねぇカイ」
    「ん?なんだ?」
    「…カイ、犬きらいなの?」
    「…あぁ」
    「そっかぁ。もしかして昔噛まれたりした?」
    「そ、そんなんじゃねぇよ」
    「えー怪しいー。そう言えばローレシアの街に犬いたよね。
     あの子にやられたとか?」
    「ちがう!いいかげんにしろ」
    「ふーんそうなんだー」
    くすっと笑いながらこっちを見てくる。ああ憎たらしい。
    「ちがうって言ってるだろ」
    拳を振り上げる真似をする。
    ほんとに殴ったりはしないが。

    「でもさー」
    「ん?」
    「さっきの子はおとなしかったし平気だと思うよ」
    「しつこい」
    「んー、なんだかねー、不思議な感じがしたんだ」
    「不思議?」
    「うん。えーとね、あの子、目がきらきらしてて、深いって言うか
     なんかどこか違うような感じ」
    「分からないな。犬はぜんぶ一緒に見えるぞ」
    「そっか、ぼくの気のせいかな」

    そうこうしているうちに遠くに城のような物が見えてきた。
    一応クギさしておくか。

    「…おい」
    「ん、なーに?」
    俺が立ち止まってナオの方を見ると、ナオもこっちを見た。
    「あのな」
    「うん」
    「…これから先、何を見たとしても、忘れるな。
     俺たちは勇者ロトの子孫だ。
     俺たちが絶望したら、世界は終わりなんだ」
    「…うん?いきなりどうしたの?」
    「…いや、何でもない」
    「変なの」

    そして俺たちは城の方角に向けて歩き出した。
    ローレシアの王子 カイ
    14.ラーのかがみ?

    城内にまだ情報があるかもしれない。
    そう思った俺たちはもう少し探索をすることにした。
    とりあえずかつて中庭であったであろう場所を目指した。

    部屋の隅に人魂が漂っていた。
    ムーンブルクの兵士だった者だろうか…?

    東の地に…
    …ここから…東の地に…
    …4つの橋が見える…小さな沼地が…あるという…
    …そこには…ラーのかがみがっ!
    …これを伝えるまで…わたしは…死にきれぬのだ…。

    「ねえカイ、ラーのかがみってなにかなぁ」
    「…さあ?聞いたことないな。」
    「でもきっと大事なものなんだよね」
    「…そうだろうな。」

    再び城内の探索を開始した。
    あと探していないのは…地下室だけか。
    薄暗い地下室への階段を下りた


    兵士がいる。まだ生きているみたいだ。
    急いで駆け寄る。

    「おいっ、大丈夫か?」
    …ひどい傷を負っている。

    息も絶え絶えな彼が何か語り始めた。
    声が聞き取りづらいので、彼の口元に耳を寄せる。

    「姫様は呪いで姿を変えられ、どこかの町に…
     わたしは…姫様をお守りすることができなかった…」

    ぶわっ
    いきなり彼の体を炎が包む。
    「あぶない!カイ、離れて!」
    ナオに強く手を引かれ、後ろに下がった。
    炎の中から彼の声が響いた。

    ラーのかがみがあれば…
    「ラーのかがみがあれば…姫様をもとの姿に戻せる…!」

    激しい炎はやがて消え、さっきまで兵士の姿をしていた彼は
    ムーンブルク王のように人魂となった。

    …姫様を…姫様を頼む…
    彼の悲痛な呟きが地下室にこだました。

    ラーのかがみを手に入れなければならない。
    新たなる目標と希望を手に
    俺たちはムーンブルクの城をあとにした。
    ローレシアの王子 カイ
    16.調子が狂う。

    はぁ。
    なんだか語ってしまった。
    こんなに真面目に語るつもりなかったのに。
    どうもこいつといると調子が狂う。

    でもまぁ、何か決意したみたいだし、いいか。

    そんなことを考えていたらいきなり
    俺の横をナオがかけ足ですり抜けて行った。
    洞窟のキングコブラのときのこと忘れたのか?
    単独行動は慎めとあれほどっ…

    目の前のナオはずぶずぶと毒の沼地に足を踏み入れていく。
    …あいつ…何も学んでないかもしれない。

    っと、黙って見てる場合じゃないな。
    俺も手伝うか。
    ローレシアの王子 カイ
    19.王女の威厳。

    ようやく泣き止んだユキと
    いきなりの抱擁の混乱から目覚めたナオが
    こっちに向かって歩いてきた。

    「カイ、やっぱりあの犬がユキだったんだよ。
     ユキ、人間に戻れたんだよ。
     ぼくうれしいよぅ」
    「…よかったな」
    手放しで喜んでいる。
    まぁ、それはそうだろうな。
    あれだけ苦労して取ったかがみが役に立ったんだ。
    しかも大好きなユキが元に戻ったとなれば
    うれしくて当たり前だ。
    と、こっちを見ているユキと目が合った。

    …美人だな。好みではないが。

    「改めてお礼を言うわ。
     ナオ、カイ、助けてくれてありがとう。
     ずっとあの姿のままだったらどうしようかと思っていたの。
     …あなたたちが知っているとおり、ムーンブルクは
     魔物の襲撃を受けて…」
    「…あぁ」
    ユキの瞳がふっと翳った。
    やっぱり親父のことが気になるんだろう。
    でもそれは一瞬のことで、すぐに顔を上げ強い瞳で見つめてきた。
    「わたしもあなたたちと一緒に行かせてほしいの。
     お父様やお城のみんなをひどい目に遭わせたハーゴンを
     なんとしても倒したいのよ」
    「…長い旅になるかもしれないぞ?」
    「かまわないわ。
     ハーゴンを倒すまではムーンブルクには帰らない。
     わたし、そう決めたのよ」
    「…いいのか?ムーンブルクの城にはおまえの親父が」
    「言わないで!…もう、決めたの」
    「…わかった。じゃ、今晩この町で休んだら出かけよう。
     俺は情報を集めてくるから、ナオとユキは宿に行って
     先に休んでいるといい」
    ちょっと気を利かせておくか。
    珍しくナオもがんばったことだしな。
    「うん、ありがとうカイ。じゃ、ユキ、宿に行こうか」
    「ちょっと待って」
    「なあに?」
    「ごめんなさいナオ、先に行ってて。わたしもすぐに行くわ」
    「ん?どこか行くの?ひとりで平気?」
    「大丈夫よ。すぐ戻るわ」
    そう言うとユキは町のはずれの方に歩いていってしまった。
    残念だったなナオ。
    「じゃ、ぼく宿に行ってるね」
    「あぁ」
    心なしか落胆しているように見えなくもないが…気にしないでおくか。

    ナオが宿に向かうのを見届けてから
    俺はユキがさっき行った方に向かった。


    あれは…ユキと…一緒にいた兵士か?
    …何を話しているんだ…?
    ちょっと近づいてみるか。

    「申し訳ございません!
     私は、あの犬が姫様だったとは気付かずに
     なんと無礼なことを!」
    がばっ
    兵士が土下座するのが見えた。
    そのまま兵士は言葉を続けた。
    「私はあの日、王様や姫様をお守りせず
     ひとりこの町に逃げた卑怯者です。
     姫様、大変申し訳ありません。
     謝ってすむことではないのは分かっております。それでも」
    「もういいのよ、顔を上げて」
    ユキが兵士の横に膝をついた。

    「あなたは悪くないわ。
     大丈夫、わたしは生きています。
     あなたも生きていてくれてよかった。
     もう自分を責める必要はないのよ。
     これからは、この町の人たちを守ってほしいの」
    「…姫様…」

    「無礼だなんて思っていないから気にしなくていいのよ。
     あなたがいてくれたおかげで、犬でいる間も
     絶望せずにすんだのだから」
    「あ、ありがとうございます!」
    「それではわたしはそろそろ行くけれど、
     この町のこと、頼みましたよ」
    「はい!わたしの命に代えても守り抜きます!」
    「頼もしいけれど…命を粗末にしないでね」

    すくっとユキが立ち上がり、その場から去った。
    何と言うか…俺やナオにはない威厳みたいなものがあるな。

    さて、情報を集めに行くか。
    ローレシアの王子 カイ
    22.呪文かぁ。

    「しかし惜しいことをしたわ」
    「ん?どうしたの?」
    「立場上帰った方がいいわとは言ったけど、
     ナミちゃんも連れていくことができれば、
     かなりの戦力になったんじゃない?」
    「あぁ、言えてるな」
    「あーごめんそれ無理。父上がナミのこと溺愛しててさ
     怪我させたりしたらぼくが殴られちゃうよ」
    「そうか…それは残念だな」
    どこの家でも親父は娘に甘いんだな。
    ユキの親父もユキには甘かったんだろうな。

    「ま、ぼくたちはぼくたちにできる範囲でがんばろうよ。
     勇者ロトの子孫だって、10種類の呪文を駆使して
     竜王を倒したんだから」
    「…呪文か…」
    いいよなぁ。俺ももっとまじめに勉強しとくべきだったかな。
    ため息をついている俺を見てユキが言った。
    「大丈夫よカイ。ナオもわたしもいるし、それに
     伝説の武器には呪文の力が宿るものもあるらしいわ」
    「…ほぉ、それは初耳だ」
    「物語とかだとそういう伝説の武器って
     悪者が隠し持ってたりするんだよね。
     洞窟の奥深くにこっそり置いてたりさ」
    「じゃ、そのうち手に入れることもできるかもしれないわね」
    「そうだねー」

    「さて」
    「ん?なあに?」
    「さっき道具屋でもらったんだが、使うか?福引券」
    「あ、やりたい。ぼく、祈りの指輪ほしくてさー」
    「じゃ、わたしのために世界一周旅行当ててきてね」
    「…そんな賞品はないぞ」
    第一これから世界一周の旅に出るだろうに。
    「んじゃ、ちょっと行ってくるね。
     見られてると緊張するからここで待ってて」
    「あぁ、わかった」
    「いってらっしゃい」

    ナオが福引所に向かったのを確認して俺はユキに切り出した。
    どうしても言っておかなければと思ったことがあったからだ。
    「…ユキ」
    「なに?」
    「お前の親父はまだ生きている」
    「!」
    「人魂になって、今も、廃墟となったムーンブルクの城を漂っている。
     お前のことが心配で死んでも死にきれないらしい」
    「そんな…お父様…」
    「昨日、ムーンブルクには戻らないと言っていたが…本当にいいのか?」
    「…」
    沈黙が続いた。
    ユキは何か言おうとしているが、言葉が見つからないのだろう。
    しばらくしてようやく口を開いた。
    「…まだ、認めたくないのよ…」
    「ん?」
    「ムーンブルクが滅亡したこと。お城が廃墟になってしまったこと。
     事実だというのは分かっていても、まだ心の準備ができてないの。
     わたしの中ではまだムーンブルクは今も残っていて…
     まだ…忘れたくないのよ。
     わがままだというのは分かっているわ。でも…ごめんなさい」
    「…あぁ」

    「カイ」
    「ん?」
    「お父様のこと…教えてくれてありがとう」
    「…あぁ、却ってすまないな。残酷かとも思ったんだが
     言っておかなければと思ってな」
    「…うん」

    「ただいまー」
    「おかえり、何が当たったの?」
    「えーと、福引券ー」
    「…」
    「…」
    「でー、その福引券を使ってもう1回やったら、聖水もらっちゃった。
     残念だなぁ、祈りの指輪ほしかったのにな」
    「まぁ、次があるわ」
    「うん、そうだね」

    「じゃ、そろそろ行こうか」
    「そうね」
    「…あぁ」
    ローレシアの王子 カイ
    25.内緒話。

    ユキが道具屋に出発したのを見計らってナオに切り出した。
    「おい」
    「ん?なあに?」

    「これから俺たちは西に行くことにしたんだが」
    「あ、うんそうだね。それがどうしたの?」
    鈍い奴だ。
    「西にはムーンブルクの城があるだろ」
    「あ、そうだった!」

    「城には寄らないことにしようかと思っている」
    「え?何で?」
    「ユキにあんな廃墟になった城を見せたいか?」
    「…見せたくないけど…王様がユキのこと待ってるかもしれないよ。
     ユキだって王様に会いたいかもしれないじゃないか。
     この間の様子だと、王様がもう死んじゃったって思ってるみたいだったけど
     あんな姿になっても生きていることが分かればきっと」
    「ユキは知ってるぞ」
    「え?何で?」
    「…俺が話した。王様が人魂になっていると」
    「何で話すんだよ。そんなのかわいそうじゃないか」
    「知らない方がかわいそうだと思ったからだ。
     どんな姿でも、生きているんだ。いつか会いに行く事だってできる」
    「だからって…」
    珍しくナオが俺のことを睨んでいる。
    当然と言えば当然か。

    「ユキはまだ心の整理がついてないから城には行けないと言っていた。
     だから今回はできるだけ城が目に入らないように遠回りして
     西に行こうかと思うんだが」
    「…わかった」
    いまいち納得はしてないように見えるが…。
    「ユキには黙ってろよ」
    「うん、分かってる。
     ぼくたちはこれから西に行く。でも
     お城の近くは通らない。これでいいんだよね」
    「上出来だ」

    「そろそろ戻ってくる頃だな」
    「うん、そうだね」

    「あ、ユキ、おかえりー」
    「ただいま。何の話してたの?」
    「あ、え、いや、なんでもないよー」
    ごまかすのが下手な奴め。助け舟でも出すか。
    「ナオ、俺たちがユキの悪口言ってたなんてばれたら
     宿屋の裏の路地に連れ込まれたあげく
     魔法で眠らされてぼこぼこにされるぞ」
    「…なんですって?」
    ユキの声のトーンが一段低くなって、すごい目でぎろっと睨まれた。
    美人が凄むと怖いな。さっさと切り上げよう。
    「いや、なんでもない。ナイフ買ったか?じゃ、行くぞ」
    「すごい怪しいんだけど…?」
    「気のせいじゃないか?それより」
    財布を返してもらってこの話題から気をそらそう。
    「あ、ごめんなさい」
    気づいたらしく財布を慌てて返してきた。

    「じゃ、行きましょうか」
    ほっ、どうやら諦めたらしい。
    「うん、そうだね」

    こうして俺たちは西へと旅立った。
    ユキがムーンブルクの兵士に手を振っていた。
    ローレシアの王子 カイ
    28.ドラゴンの角。

    ここはドラゴンの角と呼ばれる双子の塔です。
    昔はこの南の塔と向こう岸の北の塔には
    釣り橋が掛かっていたらしいのですが
    今はその橋も無く、向こうに行く手段もありません。

    1Fにいた男はそのように語った。

    「この塔は何階くらいまであるのかしら?」
    ユキがその男に尋ねた。
    「さぁ…ここ数年の間にこの塔にも魔物が住み着き
     怖くてのぼっていないので、わたしにはなんとも」
    「そう…」

    その「魔物が住み着き怖い塔」で
    観光案内をしているのも不思議だが
    あえて突っ込まないことにするか。

    「とりあえずのぼってみようよ。もしかしたら
     向こう岸に渡る方法があるかもしれない。
     ロープとか張ってるかもしれないしさ」
    「…」
    この高い塔の屋上からロープで向こうに渡ることを想像し
    思わず身震いをした。
    弱みを見せるのも嫌だから黙ってたんだが…
    俺、高いところ苦手なんだよな。

    「なぁ、外に出て海峡を泳いで渡るのはどうだ?
     こんな高い塔のぼるよりその方が」
    「嫌よ。あんな激しい流れ、泳ぎたくないわ」
    即座に反対された。
    「…そうか」

    仕方ない、のぼるか。
    俺たちはさっきの男に礼を言い、階段をのぼった。
    そして2Fについた時、俺は
    さっき強硬に「泳ぐ」と主張しなかったことを猛烈に後悔した。

    歩けるところはドーナツ状に細い外周のみ、
    道の幅は人がふたりやっと通れるくらいの細さ、
    そしてフロアの中心部は吹き抜けになっていて
    足を踏み外すと1Fまで落ちてしまいそうだ。
    3Fに続く階段は、ぐるっとひと回りした向こう側にあり
    この細い外周を歩くことを考えるだけで冷や汗が出てくる。

    しかもただ歩くだけでも狭くて歩きづらい通路で
    モンスターに遭遇したりする。
    足元に気を取られ、うまく攻撃を避けることもできない。

    そんな感じで3Fへの階段までたどり着いた。
    3Fはきっと普通の道だろう。
    そんな俺の期待ははかなくも打ち砕かれ
    2Fと同じようなドーナツ状の道が続いていた。
    …もう嫌だ。

    そんなこんなでやっと6Fについた。
    のぼり階段がないところをみると、ここが最上階なのだろう。
    このフロアは今までとは違い、広い床がある。
    ただ…外周がないので、足を踏み外すと下までまっさかさまだ。

    …怖い。

    ざっと調べてみたところ、やはり釣り橋はなく
    向こう岸に渡る手段は見当たらない。
    「ナオ、やっぱり下に呪文でおりないか」
    「えー、せっかくのぼったのにー」
    「ここにいたって仕方ないだろう。な、ユキ」
    ユキの方に視線を移すと何か難しい顔をしている。

    やがて顔を上げたユキがこっちを向いて言った。
    「カイ」
    「ん?」
    「飛び降りるわよ」
    「おまえ馬鹿か?こんな高いところから落ちたら死ぬだろ」
    「馬鹿とか言うなよー」
    「死なないわ。よく道具を見て。わたしたちは大丈夫よ」

    道具?
    言われてがさがさと袋を漁ると
    風の塔で拾った黄色いマントがあった。

    「このマントを着けると、高いところから落ちても
     ムササビみたいに飛べるんでしょ?
     ま、デザインはちょっとあれだけど、この際仕方ないわ。
     カイ、それを装備して塔から飛び降りましょう。
     わたしとナオはカイと手を繋いで一緒に落ちるわ」
    「ここから飛び降りるの?うわあ」
    …ナオの目が輝いてる気がする。そう言えばこないだの
    風の塔でもこのふたりははしゃいでたな。

    「ちょっと待てよ。俺こんなダサいマントつけて
     飛び降りるなんて嫌だぞ」
    そんな怖い真似できるか。
    「嫌でもやるの。ここを越えなければ
     わたしたちは先に進めないのよ。
     どうしても飛び降りてくれないのなら
     わたしはマント無しでこの塔から飛び降りるわ」
    そう言ってつかつかと端っこまで歩くユキ。
    …本当に飛び降りたら死ぬぞ。

    「ユキ、危ないよ、戻ってきなよ」
    ナオが説得を試みてユキに近づくがユキが立ち止まる様子はない。
    「おい、ユキ」
    名前を呼ぶとユキは振り返り、鋭い眼光でこっちを見返してきた。
    「カイ、…もしかして、怖いの?」

    怖い、確かに怖いけどそれを口にすることは許されない。
    仕方がない。
    俺は覚悟を決めた。

    「わかった。ちょっと待ってろ」
    ダサいマントを羽織る。
    外から吹く風でマントがなびく。
    ふわっと浮くような感じが全身を包む。

    端までゆっくりと歩く。
    ふたりに手を差し出しきつく握る。
    「行くぞ、手をはなすなよ」
    「ええ」
    「うん」

    すくみそうになる足を何とか前に進め、
    ごくりとつばを飲み込み、
    両手を仲間と繋ぎ、
    俺は塔から足を踏み出した。

    「うわああああああ」
    激しいスピードでの落下。
    体が下に思い切り引っ張られる。
    胃が重力に無理に逆らって空中に留まっているような感じ。
    内臓がかゆいような変な感覚に襲われる。
    と、突然、下からの突風を感じた。
    「…え?」

    背中に羽織ったマントが風を受けて
    俺たちの体は北に流される。
    気がつくとさっきほどのスピードはもうない。
    ゆらゆらと空中を漂い、やがて俺たちは
    北の塔の横の地面にゆっくり着地した。

    「…生きてる」
    自分の身の安全をこれほど感謝したことはない。
    いくら安全でもこんなのは二度とごめんだ。
    すると。

    「ねえカイ、マント貸して!
     今のおもしろかった!ぼくもう一回やりたい!」
    「は?」
    目をキラキラさせてナオが俺の腕をつかむ。
    「カイはここで待ってていいから。
     ユキも一緒にやろうよー」
    何を言ってるんだこいつは。
    「は?おまえ何言ってるんだ?だめだめ。
     ユキもこんなの嫌に決まってるだろ。
     さ、先行くぞ」
    と、ナオに答えたのだが…。

    「わたしも行きたいわ」
    なに!?
    「もう一回やりましょう」
    「…」
    ユキの目をみるとナオと同じようにキラキラしている。
    物腰は落ち着いているがかなりテンションが高そうだ。

    こいつらには何を言っても無駄かもしれない。
    俺は無言でマントを外してナオに渡した。

    「三回くらいやったら戻るわね」
    「…あぁ」
    勝手にしろバカップル、という言葉が浮かんだが飲み込んだ。
    まだがくがくする膝を抱え、塔により掛かって座った。

    「ユキ、行こう!」
    「ええ」
    ふたりは手と手を取り合って階段まで走って行った。
    高いところが好きな奴らの考えることはいまいちよくわからない。

    さて、少し休むか。
    ローレシアの王子 カイ
    31.ゆらゆら。

    どうして船ってもんはこう、ゆらゆら揺れるんだろうな。
    むかむかする胸をおさえて
    そんな事を考えながら座っていたら
    向こうからユキが歩いてきた。
    あまり情けない所を見せたくもないんだが。
    とりあえず、やあって感じに手を上げてみた。

    「調子はどう?」
    「…ん?」
    「ナオに聞いたの。…本当に大丈夫?顔が青いわ」
    俺、そんなにやばい顔してるのか?
    「ん、ちょっと気持ち悪いが…そのうち慣れる」
    「なら、いいんだけど…。
     もうすぐアレフガルドに着くと思うから
     街で少し休みましょう」
    「そうしてもらえると…助かるな」
    「ううん、気にしなくていいのよ」

    「あの、聞きたいことがあるんだけど」
    「ん?なんだ?」
    何だか思いつめた顔をしている。どうしたんだ?
    「たいしたことじゃないんだけど、えーと、あの、
     …わたしって、ピリピリしてるのかしら?」
    何を聞くかと思えば。
    「ナオに何か言われたのか?」
    そう聞くと、ぷるぷると首を振る。
    「ううん、そういうわけじゃないんだけど…」
    「うーん、そうだなぁ…しいて言うとすれば…」
    「すれば?」
    「美人だから、黙ってると冷たく見えるかもしれない」
    「え?」
    え?なんて言いながら顔がぱっと輝いている。
    「あ、いや、何でもない」
    「よく聞こえなかったからもう一度」
    「さあ、なんて言ったんだったかなー。
     忘れちゃったなー」
    「えーわたしもう一度聞きたいわ」
    腕のあたりを軽く掴んでゆさゆさと揺さぶられた。
    …しっかり聞こえてるんじゃないか…。
    「あー揺らすな気持ち悪いやめろやめろ」
    「あ…ごめんなさい…」
    あーむかむかする…。

    「…それでいいんじゃないか?」
    「え?」
    「大丈夫だと思うぞ」
    「…カイ…」

    「お」
    「?」
    「陸が見えてきた。もうすぐ着くな」
    「ほんとね。じゃあわたし、ナオを呼んでくるわ」
    「ああ。それじゃ」
    ユキはたたたっと音を立てて走っていった。
    何でこの揺れる船であんなに元気なんだ…。

    ようやく陸に上がれる…。
    この船酔い、何とかならないもんかなぁ。
    船乗りの奴らは船酔いなんてしないんだろうか…。

    しかし、自分で言うのも何だけど…
    さっきのはかなりわざとらしかったな。
    なーにが「忘れちゃったなー」だよ…はぁ、恥ずかしい。
    何だか調子狂うな。
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