かちゃ。
俺たちはラゴスが隠れていた牢屋の向かいの牢屋を開け
中にいる老人の話を聞くことにした。
「ちょっと、勝手に開けていいの?
悪いことしたから捕まってるんでしょ?」
カギを開けたあとに咎められても困るのだが。
大体さっきだってラゴスの牢屋開けた気がするが。
「ああ、まあ平気だろ。襲ってきたとしても老人だし
逃げようとしても外には兵士がいるからな」
「トイレに行っててラゴスを逃がしたって思い込んでた兵士さん?
何か頼りないような気がするけどなー」
ナオにまで突っ込まれる兵士…。
「じゃあ、変な様子を見せたら殴って気絶させて俺たちも逃げよう」
我ながら物騒だとは思うが。
老人は真っ暗い牢の奥にじっと立っていた。
電気がないわけでもないんだから点ければいいのにな。
とりあえず話し掛けてみよう。
「おい」
すると、老人はくわっと目を見開いていきなり叫んだ。
「大神官ハーゴンはロンダルキアの山々に!」
「い、いきなり何。びっくりするじゃない」
ユキがびびっている。俺だってびびる。
そんな様子にはお構いなしで老人は続ける。
どうでもいいが叫ばなくても近いから聞こえるぞ。
「邪神の像を持つものだけが
ロンダルキアへの道を開くことができるそうじゃ!」
「あ、あのー、その、邪神の像って…」
ナオが話し掛けると
「大神官ハーゴンはロンダルキアの山々に!」
また繰り返し出した。
「…出ましょうか」
「そうだな」
俺たちはそそくさと老人の牢屋から退散した。
あの様子だと特に逃げ出すこともないだろう。
牢屋から出ると外の光が目を刺す。
やはり暗いところにはあまり長いこと居たくないものだ。
「邪神の像って何かなあ」
「埴輪とか?よく分からないけれど
きっと邪神を崇拝する時に使うんじゃない?」
埴輪を使って邪神を崇拝するハーゴンを想像したら
何だかおかしくなってきた。
「どこにあるんだろうな。まあそのうち見つかるか」
「さて、この街も大体見たし、この後どうしようか」
「あ、はーい。ぼく、開けまくりツアーやりたい。
せっかくカギ手に入れたんだし。
今まで通った町に牢屋ってけっこうあったもん」
「そうか。…ユキはどうだ?」
「開けまくり、いいと思うわ。
ローレシアの牢屋からにしましょうよ。
変な神父さんがいたわよね」
「あ、そう言えばいたねー。そうしようよ」
こいつらはそんなに旅の扉をくぐりたいのか…はぁ。
「じゃあローレシアに行くか。ここからならザハンも近いしな」
そして俺たちは街を出てザハンにある旅の扉に向かった。