牢屋のカギを手に入れたぼくたちは
特にあてもなくペルポイの町をふらふらと歩いていた。
こんなに広い町が地下にあるなんて、ほんとにすごいなあ。
「ねえ、せっかくカギを手に入れたことだし、
どこかに牢屋はないかしら」
「ん?町に牢屋?」
「ええ。あ、あの兵士さんに聞いてみましょうよ」
たたっとユキが町はずれにいた兵士さんに駆け寄った。
遅れてぼくたちもユキの後を追う。
何だかこの兵士さん、イライラしているみたい。
どうしたのかな?
「わたしは、ラゴスという盗人をこの奥の牢屋に入れたんだ。確かに入れたんだ。
なのに!わたしがトイレに行っている隙に、ラゴスは逃げてしまったんだ。
ああ、せっかく捕まえたのに!」
どうやら泥棒に逃げられたみたいだ。
「逃げた?扉のカギはきちんとかけたんでしょう?」
「ああ。それが…扉は閉まったままだったんだ。
きっとラゴスはどこかでカギを手に入れ、扉を開けて外に出て
逃げたと分からないようにカギを閉めたに違いない!」
兵士さんはずいぶん興奮している。
「見張りはいなかったのか?見たところ、牢屋からの出口はこの通路だけのようだが」
カイが尋ねる。
「ああ、ここだけだ。だが、だれも通っていないぞ。
町の者にも聞いてみたのだが、あれからラゴスを町で見たと言う者はいない。
きっともう町の外に逃げ出してしまったんだ。ああ!」
カギは閉まっていた。
逃げた後にだれも町で見た者はいない。
もしかして…。
「ねえ、もしかしてまだ中にいるんじゃない?」
ぼくは思いついたことを言ってみた。
「馬鹿な!あれから牢屋の中はきちんと調べたんだ。いるわけがない」
兵士さんが反論する。
「そうね、調べてみましょうよ」
「そうだな」
「…いないと思うのだが…」
兵士さんの声にだんだん力がなくなってきた。
「確かにカギは閉まってるわ」
ラゴスがいたという牢屋の前に来た。
牢獄はふたつあり、ラゴスは右側の部屋にいたらしい。
左側の部屋には老人がいるのが見える。
後で話を聞いてみよう。
「よし。ナオ、カギを開けてくれ」
「はーい」
カチっと音がして牢屋があっさり開いた。
このカギ…お店で売ってるんだよね。
こんなかんたんに脱獄の手伝いしちゃっていいのかなあ。
「中に入るぞ」
カイに続いてぼくとユキも中に入った。
ぐるっと部屋を見回してみても、ラゴスらしき人影はない。
「やっぱり逃げたのかしら」
「うーん、どうだろうな」
ふと壁を見ると、色が違う部分があった。
大人ひとり分くらいだろうか。
「カイ、あの壁なんか変だよ」
ぼくはその壁を指差した。
「ん?どれ?あ!」
壁に触れたカイが壁に吸い込まれるように向こうに倒れた。
壁に見えたのは壁の模様をしたカーテンだった。
カーテンの奥には男がひとり。

「あ、見つかっちゃった」
「お前がラゴスか?」
「うん。水門のカギを返すから許してね。ごめんね」
「は?何だこれ」
「ごめんね、ごめんね」
ラゴスはカイに変なカギを渡して、ひたすらごめんねを繰り返していた。
「謝るくらいなら最初からやらなければいいのに」
ぼそっとユキが言った。
「ほんとだよね」
そしてぼくたちはラゴスを見つけたことを外の兵士さんに伝えて
左の部屋の老人に話を聞きに行った。