「さてこれからどうする?」
大きな樹がある島から船に戻っての作戦会議は
とりあえず次回行く場所を決める所からスタートした。
「はいはいはい!わたし、アレフガルドのほこらに行きたい!」
「あーユキ、別に手はあげなくていいぞ」
「あ、ぼくもアレフガルド賛成ー」
「ん?お前もか?何でまた」
「うん。武器屋の二階の王様の格好した人とお話してみたいんだ」
「ああ、金のカギも手に入れたし、それはいいかもな。
で、ユキは何でアレフガルドのほこらに行きたいんだ?」
「だって、しるし手に入れたし!
あの頭に来るおじいさんをぎゃふんと言わせたいのよ」
「このお姫様はどこでそんな言葉を覚えたんだ」
「…何か言った?」
「いえ何にも」
聞こえてるわよ。
「じゃあ、アレフガルドに行くってことでいいな。
ここらへんはまだ来たことない場所だから
こんな感じでぐるっと南から回って行こうか」
カイが地図を指で時計回りになぞった。
「ねえ、あれ町じゃない?」
船を出してちょっと西に進んだあたりでナオが指差した先には
確かに町らしき建物があった。
「行ってみましょうよ。何かいい物が売ってるかもしれないわ」
「じゃあ行ってみるか」
そしてわたしたちはその町に入ったのだけれど…。
「空き地だな」
「そうね」
狭い空き地に男の人がひとり焚き火にあたっていた。
奥に金のカギの扉がかかった小さい小屋が見える。
とりあえずその男の人に話し掛けようとしたら
「わんっ!」
犬の声がした。
するとカイが走ってその金のカギの扉まで行き
カギを開けて先に行ってしまった。
…よっぽど怖いのね。
「みんな…みんな私だけを残してどこかに行ってしまった…。
うえ~ん、さびしいよおっ」
焚き火の男の人が半べそをかいている。
確かに、こんな空き地に犬とふたりなら淋しいに違いないわ。
何だかちょっと気の毒になってきた。
「おーい、まだかー?」
扉の向こうからカイが呼ぶ声がする。
「はーい、今行くー。ユキ、そろそろ行こう」
「あ、はい」
わたしたちはカイが開けた扉の向こうにあった階段をおりた。
「…町だわ」
地下に広がっていたのは上の空き地からは考えられないほどの広い町。
見事なカモフラージュだわ。
階段を降りてすぐの女の人によると、この町はペルポイという町らしい。
ハーゴンを怖れて町の人たちは地下に隠れ住んだのだとか。
こんなにアクティブに引きこもる集団ってそうそうあるものではないわ。
階段の左手に武器屋さんがあるみたい。
品揃えはどんな感じかしら。
「…すごいな」
確かに品揃えは他の町よりはるかに上だった。
こんな引きこもった町でそれほど需要があるとも思えないのだけれど。
カイは細身の剣を手に取って眺めているし
ナオは壁にかけてある丸い盾が気になるらしい。
わたしの目を引いたのはそれはそれは高そうなミンクのコートだった。
値札を見ると65000G。
薬草が10G、毒消し草が8Gなのを考えるとかなりの高値だ。
すごいわ。何てきれいなのかしら。
それにふわふわしててとってもあったかそう。
「ねえ、カイ」
「だめだ」
「まだわたし何も言ってないわ」
「どうせそのコートだろ。高いから無理」
どっかの誰かが何かを箱で買ったりするから…。
「…お金が無いなら仕方がないわね。
まあこの間、みかわしの服を買ってもらったし、ね」
「すまない」
と、ナオが盾を持ってカイの所に来た。
「カイ、ぼくこの盾ほしい」
「ん?何か特別な盾なのか?普通のよりちょっと高いが」
「うん。これ、力の盾って言って、ちょっとふしぎな力があるんだ」
「ふしぎな力…よく分からんのだが」
「おねがい!ぼくこれずっとほしかったの!
城にいる時に読んでたカタログに載ってて!
今までずっと皮の盾だったし。
ロトの盾はカイが使うんだよね?
ぼくもぼく専用の盾ほしいの」
「…まあ出せない金額でもないし、買ってもいいぞ」
「ほんと?ありがとー」
「無くすなよ」
…おねだり上手ね。わたしも見習わなきゃ。
あら?
この町には不似合いな、人相の悪い男が
道具屋さんの近くにいるのが見えた。
…何してるのかしら?